
出典:SUZUKI公式
GSX-S1000GTが曲がらないと感じて悩んでいませんか。スズキが誇るグランドツアラーであるGSX-S1000GTは、GSX-R1000由来の150馬力エンジンを搭載し、高速道路からワインディングまで幅広くカバーできるスポーツツアラーとして高い評価を受けています。しかし、実際にオーナーとなったライダーの中には、峠道やタイトなコーナーで思うように車体の向きが変わらず、曲がらないと感じるケースが少なくありません。
この違和感の正体は、バイクの性能不足ではなく、ツアラーとしての設計思想とライダーの期待値のギャップにあることがほとんどです。キャスター角やトレール量といった車体ジオメトリの特性、標準状態のサスペンションセッティング、タイヤの選択、さらにはパニアケースなどの積載物による重量配分の変化など、複数の要因が絡み合っています。逆に言えば、原因を正しく理解し、適切な調整やライディングの工夫を取り入れることで、GSX-S1000GTの旋回性能は大きく改善できるのです。
この記事では、GSX-S1000GTが曲がらないと言われる原因をジオメトリやサスペンション、タイヤといった技術的な側面から分析し、さらに実践的な乗り方のコツまで網羅的に解説していきます。
- GSX-S1000GTが曲がらないと感じる技術的な原因と車体特性
- サスペンションやタイヤ交換による旋回性改善の具体的な方法
- パニアケースや電子制御が旋回に与える影響と対処法
- 荷重移動やギヤ選択など走りで曲がらないを克服するテクニック
GSX-S1000GTが曲がらないと言われる原因と対策
- ツアラー設計による直進安定性の高さが理由
- キャスター角とトレールをNinja 1000SXと比較
- サスペンションのプリロード調整で旋回性が変わる
- タイヤ交換でハンドリングは改善できるのか
- パニアケースの重量が旋回に与える影響
- 電子制御SDMSのモード選択と峠での走り方
ツアラー設計による直進安定性の高さが理由
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— Motorcycles & More (@MoreMotorcycles) February 9, 2026
GSX-S1000GTが曲がらないと感じる最大の理由は、このバイクがグランドツアラーとして設計されている点にあります。結論から言えば、直進安定性を重視した車体設計が、タイトなコーナーでの旋回時に「重さ」や「鈍さ」として感じられているのです。
GSX-S1000GTのエンジンは、伝説的なスーパースポーツであるGSX-R1000をルーツとする999cc直列4気筒ユニットです。一方、車体側は専用設計の軽量・高剛性アルミツインスパーフレームが採用されており、エンジンとフレームの両面でスポーツ性能の基盤が確保されています。しかし、ツアラーとしての進化の過程で、フルカウル化やパニアケース対応の専用シートレール強化が施され、車体重量は226kgに達しました。ネイキッドモデルのGSX-S1000と比較すると、この重量増と重心位置の変化が、軽快な身のこなしを若干スポイルしている面は否めません。
実際に、以前CBR650Rのようなミドルクラスのスポーツバイクに乗っていたライダーからは、「ヒラヒラと車体を倒し込めるバイクとは感覚が全く違う」という声が多く聞かれます。GSX-S1000GTは視線を向けるだけで自然に曲がっていくような受動的なハンドリングではなく、ライダーが意識的に荷重移動やアクションを起こすことで真価を発揮する、能動的なスポーツバイクとしての側面が強いのです。
つまり、GSX-S1000GTが「曲がらない」のではなく、「曲げにいく」操作が求められるバイクだと理解することが、違和感を解消する第一歩になります。
もう一つ見落とされがちなのが、ハンドルバーの特性です。GSX-S1000GTのハンドルは、先代モデルにあたるGSX-S1000Fと比較して幅が23mm広く、ライダー側に14mm近づけた位置に設定されています。さらにラバーマウントが採用されており、長距離走行時の振動を軽減してくれる反面、微細な路面情報がフィルタリングされてしまうため、ダイレクトな接地感が希薄になる場合があります。この「情報の遮断」が、コーナー進入時にフロントタイヤの挙動を掴みにくくさせ、旋回への不安や違和感に繋がっているケースも考えられるでしょう。
また、999ccの直列4気筒エンジンが持つクランク慣性も無視できない要素です。高速域での安定性に大きく寄与する一方、低中速域ではバイクを倒し込む際の抵抗として感じられることがあります。こうした複数の要素が重なり合い、「曲がらない」という印象を形成しているのです。
キャスター角とトレールをNinja 1000SXと比較
GSX-S1000GTのハンドリング特性を客観的に理解するためには、ライバル車との車体ジオメトリの比較が非常に有効です。特に、スポーツツアラーカテゴリーで最大の競合とされるカワサキ Ninja 1000SXとのディメンション比較は、スズキの設計意図を明確に浮き彫りにしてくれます。
| 比較項目 | GSX-S1000GT | Ninja 1000SX | Tracer 9 GT+(現行) |
|---|---|---|---|
| キャスター角 | 25° | 24° | 24°25′ |
| トレール量 | 100mm | 98mm | 106mm |
| ホイールベース | 1,460mm | 1,440mm | 1,500mm |
| 車両重量 | 226kg | 236kg | 232kg |
| シート高 | 810mm | 820mm | 845-860mm |
まず注目すべきは、キャスター角の違いです。GSX-S1000GTの25°に対し、Ninja 1000SXは24°とやや立った設定になっています。キャスター角が立っているほどフロントタイヤの応答性が高まり、ブレーキを残しながらのコーナー進入でより鋭い二次旋回を得やすくなります。わずか1度の差ではありますが、実際の走行シーンでは明確な個性の違いとして現れるポイントです。
トレール量についても、GSX-S1000GTの100mmに対してNinja 1000SXは98mmと、こちらもGSX-S1000GTの方がわずかに大きい数値です。トレール量が大きいほど直進安定性が増す反面、ハンドルを切る際の手応えも増すため、タイトなヘアピンや低速域で「フロントが外へ逃げる」ような感覚を生みやすくなります。
一方、現行のTracer 9 GT+はキャスター角が24°25′とNinja 1000SXに近い数値ですが、トレール量は106mmとGSX-S1000GTよりも大きく、ホイールベースも1,500mmと3車中最長です。ロングツーリングでの直進安定性をさらに重視した設計と言えるでしょう。
ここで重要なのは、GSX-S1000GTがネイキッドモデルのGSX-S1000と同じホイールベース(1,460mm)とキャスター角を維持している点です。Tracer 9 GT+のようにホイールベースを大幅に伸ばす手法を取らず、ワインディングでのスポーツ性を残そうとしたスズキの拘りが見て取れます。
こうした数値を踏まえると、GSX-S1000GTは高速域での安定感やハイスピードコーナーでの盤石な安定性に優位性を持つ一方で、タイトなコーナーの連続する峠道では「向きが変わるまで少し待つ必要がある」特性を持っていることが分かります。これは性能の優劣ではなく、設計思想の違いによるものです。
サスペンションのプリロード調整で旋回性が変わる
GSX-S1000GTの旋回性能を手軽に改善する方法として、多くのオーナーが効果を実感しているのがサスペンションのセッティング変更です。特に、リアサスペンションのプリロード調整は、車体の姿勢そのものを変化させるため、旋回性能に劇的な影響を与えます。
標準状態のリアサスペンションは、想定される平均体重(約75kg前後)やタンデム走行、積載状態を考慮したやや硬めのセッティングになっています。このため、体重の軽いライダーや空荷で走る場合に「リアが動かない」「路面のギャップで突き上げが強い」と感じることがあるのです。リアサスペンションが適切に沈み込まないと、コーナーでフロントへの荷重移動が不足し、結果として旋回弧が外側に膨らんでしまいます。
| 調整箇所 | 標準設定 | ソフト志向の調整例 | 期待される効果 |
|---|---|---|---|
| フロント・プリロード | 線2 | 線1 | 進入時の沈み込みを促進 |
| フロント・伸側減衰 | 8クリック戻し | 9クリック戻し | 伸び上がりを抑えて安定化 |
| フロント・圧側減衰 | 2回転戻し | 約2.3回転戻し | 路面追従性の向上 |
| リア・プリロード | 3段目 | 1~2段目 | リアの沈み込みを許容 |
| リア・伸側減衰 | 1回転戻し | 約1.4回転戻し | 跳ね返りの抑制 |
実際に旋回性向上を実感したライダーのセッティング例を見ると、前後ともにやや柔らかめに振る傾向が見られます。特に体重が57kg以下の軽量なライダーの場合、リアのプリロードを標準のまま走行すると、フロントブレーキを離した瞬間に車体が起き上がってしまう現象が起きやすく、旋回のきっかけを掴みにくくなるとの報告もあります。
ただし、前後サスペンションを柔らかくしすぎると、コーナー出口でラインが乱れやすくなるトレードオフが存在します。いきなり大幅に変更するのではなく、まずはリアのプリロードを1段ずつ抜いて、コーナーでの向きの変わりやすさを確認しながら、徐々に減衰力で微調整を行う方法が推奨されます。
タイヤ交換でハンドリングは改善できるのか

Ride Style・イメージ
結論から言えば、タイヤ交換はGSX-S1000GTの旋回性を改善するうえで最も体感効果が大きい投資の一つです。標準装備のダンロップ SPORTMAX Roadsport 2は、高速安定性と耐摩耗性のバランスに優れたタイヤですが、ライダーによっては旋回時のプロファイル(タイヤの形状)やコンパウンドの特性が「曲がりたい」という感覚にマッチしないことがあります。
多くのオーナーが高い評価を与えているのが、ミシュラン ROAD 6です。ROAD 6はドライ路面での安定感に加え、ウェット性能と耐摩耗性のバランスに優れ、特筆すべきはしなやかな旋回特性にあります。ワインディングでのコーナー進入から立ち上がりまでが非常にスムーズになり、コーナー出口で曲率が急に変化するような場面でも、余裕を持って車体を寝かし込めるようになるとの評価が多く見られます。
一方で、よりダイレクトな操作感やキビキビとした向き変えを求める場合は、ブリヂストン BATTLAX SPORT TOURING T33が選択肢に挙がります。ROAD 6がしなやかに曲がる特性を持つのに対し、T33はしっかり向きを変えるというスポーツ性の高いフィードバックを返す傾向にあるため、好みに応じて選ぶとよいでしょう。
| タイヤ銘柄 | 旋回特性 | 向いているライダー |
|---|---|---|
| ダンロップ Roadsport 2(標準装備) | 安定重視・ニュートラル | 高速巡航やロングツーリング中心 |
| ミシュラン ROAD 6 | しなやかで自然な旋回 | ツーリング先のワインディングも楽しみたい方 |
| ブリヂストン T33 | シャープで積極的な向き変え | 峠道でのスポーツ走行を重視する方 |
なお、タイヤのハンドリングへの影響は新品時だけではありません。フロントタイヤの偏摩耗(段減り)やリアタイヤのセンター部分がフラットに摩耗した状態では、倒し込みの初期段階で抵抗を感じたり、ある角度から急に倒れ込んだりする不自然な挙動が出やすくなります。もし最近になって特に曲がりにくくなったと感じる場合は、まずタイヤの残溝と形状を確認してみてください。
また、新品タイヤに交換した直後は表面に離型剤が残っているため、最初の160km程度は急激なバンクを控え、徐々にバンク角を深めていくことが大切です。
パニアケースの重量が旋回に与える影響
GSX-S1000GTはパニアケースの装着を前提に設計されていますが、積載物が旋回性能に与える影響は想像以上に大きいものです。特にサイドパニアとトップケースの両方を装着した状態では、ハンドリングが大きく変化することを認識しておく必要があります。
サイドパニアを装着すると、車体後方の左右に重量物が配置されるため、バイクを傾ける(ロール)動作に対する慣性モーメントが増大します。実際に、パニアを外して走行した際に「こんなに軽快に走れるバイクだったのか」と驚くオーナーは少なくありません。パニアを取り外した状態のGSX-S1000GTは、純粋なスポーツバイクに近いキビキビとした走りを見せてくれます。
さらに深刻な影響を及ぼすのがトップケースの装着です。高い位置に重量物が配置されることで重心が上がり、走行中の旋回初期において車体が重く感じられるようになります。加えて、トップケースが原因で高速走行中にハンドルのブレ(ウォブル現象)が生じるケースも報告されており、これがコーナー進入時の不安感に繋がり、結果として積極的に車体を傾けられなくなる心理的障壁になっている可能性もあるでしょう。
ワインディングを楽しむ日はパニアケースを外し、ロングツーリングで積載する際はリアのプリロードを積載重量に合わせて強めに調整する。この使い分けを意識するだけで、GSX-S1000GTの旋回性は大幅に改善されます。
積載状態でのリアサスペンション調整は特に重要です。積載によってリアが沈み込むと、キャスター角がさらに寝てしまい、フロントの応答性がますます鈍くなります。リアのプリロードを適切に強めることで、車体姿勢を正常に保ち、本来のハンドリングに近づけることができるのです。
電子制御SDMSのモード選択と峠での走り方
GSX-S1000GTインプレッション
◯
・見た目がかっこいい!!
・とにかくポジションが楽なのに峠でひらひら曲がる
・エンジンの音質が太く良すぎる!
・走ってると排熱がほとんど気にならない△
ハンドルが高すぎてちょっと取り回ししにくい(慣れ?)結論:維持費以外で買わない理由がない pic.twitter.com/MTRJZKf3cK
— NiSSY⊿ GT (@Nissy_yzfR826) July 27, 2025
GSX-S1000GTには、スズキ・インテリジェント・ライド・システム(S.I.R.S.)の一部として、ドライブモードセレクター(SDMS)が搭載されています。3つのモード(A/B/C)からエンジンの出力特性を選択できるこの機能は、実は旋回性能にも大きく関わっています。
最もダイレクトなAモード(アクティブ)は、アクセル開度に対するレスポンスが非常に鋭く設定されています。しかし、この過敏な反応がコーナーのクリッピングポイント付近での微細なアクセル操作を難しくし、ギクシャク感を生むことがあります。アクセルを開けるタイミングが遅れてしまうと、旋回弧が外側に膨らんでしまい、結果的に「曲がらない」と感じる原因になり得るのです。
多くのベテランライダーが峠道で推奨しているのがBモード(ベーシック)の使用です。Bモードではパワーデリバリーが滑らかになるため、旋回中のアクセルコントロールがしやすくなります。穏やかな加速はリアサスペンションを適切に沈み込ませ、トラクションを確保しながら安定した旋回軌跡を描くことを可能にしてくれるでしょう。
スズキ独自のローRPMアシストは、発進時やエンスト防止に優れた機能ですが、低速コーナーの進入やUターン時に意図しない回転数の上昇を感じるライダーもいます。減速しようとしている場面でバイクが前へ進もうとする感覚は、慣れるまで違和感の原因になることがあるため、システムの介入を理解したうえで操作に慣れていくことが大切です。
なお、Aモードの鋭いレスポンスは高速道路での追い越しや直線での加速では大きな武器になります。場面に応じてモードを切り替える柔軟な使い方が、GSX-S1000GTを楽しむコツと言えるでしょう。
GSX-S1000GTが曲がらないを克服する実践的な乗り方

Ride Style・イメージ
- 荷重移動とニーグリップを意識したライディング
- ローRPMアシストの特性を理解しておく
- 幅広ハンドルのポジションに慣れるコツ
- ギヤ選択とエンジンブレーキの活用方法
- タイヤの偏摩耗やメンテナンス不足にも注意
荷重移動とニーグリップを意識したライディング
GSX-S1000GTの旋回性能を引き出すうえで最も大切なのは、ライダー自身の荷重移動を意識することです。先述の通り、このバイクは「曲がってくれる」のを待つタイプではなく、ライダーが積極的にアクションを起こすことで本来の旋回力を発揮する能動的なスポーツバイクです。
まず基本となるのが、下半身によるホールド、いわゆるニーグリップの徹底です。GSX-S1000GTのような車重226kgのリッターバイクでは、上半身の力だけでバイクをコントロールしようとすると、肩や腕に力が入り、ハンドルのセルフステアを阻害してしまいます。タンクを両膝でしっかりと挟み、下半身で身体を安定させることで、上半身をリラックスさせ、ハンドルに余計な入力をしない状態を作ることが重要です。
コーナー進入では、外足のステップをしっかりと踏み込み、内足の荷重を抜く意識を持つと、車体はスムーズにイン側へ向いていきます。GSX-S1000GTのステップ位置は、身長178cm程度のライダーにとって膝が適切に曲がり、踏ん張りが利きやすい位置に設計されているため、このフットワークを積極的に活用しない手はありません。
ポイントは「ハンドルで曲げる」のではなく「下半身と視線で曲げにいく」という意識です。視線を行きたい方向へ送り、外足で踏ん張りながら内側へ体重を預ける。この一連の動作が自然にできるようになると、GSX-S1000GTの旋回はみるみる変わっていきます。
コーナー進入前のブレーキングでフロントに荷重を載せ、フォークを沈み込ませることも大切です。フロントフォークが縮むことでキャスター角が実質的に立ち、フロントタイヤの応答性が高まります。ブレーキを完全にリリースするのではなく、軽く残しながらターンインすることで、より安定した旋回が可能になるでしょう。
ローRPMアシストの特性を理解しておく
前述の通り、GSX-S1000GTにはスズキ独自のローRPMアシスト機能が搭載されています。ここでは、この機能が低速旋回やUターンに与える影響と、上手に付き合うための方法をさらに詳しく解説します。
ローRPMアシストは、エンジン回転数が一定以下に下がった際に自動的に回転数をわずかに引き上げ、エンストを防止する機能です。発進時には非常にありがたい機能ですが、低速でのUターンやタイトコーナーでは、この自動的な回転上昇が「バイクが勝手に前へ進もうとする」感覚を生むことがあります。
特に、減速しながらコーナーに進入しようとしている場面でクラッチを半クラッチ状態にすると、意図しない回転数の上昇が起こり、「止まらない」「思ったより速度が落ちない」という恐怖心に繋がるケースが報告されています。この現象自体はシステムが正常に動作している結果であり、バイクの不具合ではありません。
対処法としては、まずローRPMアシストが介入するタイミングと回転域を体感として掴むことが第一歩です。駐車場などの安全な場所で低速走行を繰り返し、クラッチの遊び量やアシストの介入ポイントを確認しておくとよいでしょう。クラッチレバーの遊び調整を行い、自分の手の大きさや操作スタイルに合わせてフィーリングを最適化することも有効な手段です。
慣れてくると、ローRPMアシストの恩恵を受けながらスムーズな低速走行ができるようになります。エンストの心配が減る分、コーナリングに集中できるというメリットも見逃せません。
幅広ハンドルのポジションに慣れるコツ

Ride Style・イメージ
前述の通り、GSX-S1000GTのハンドルバーは先代のGSX-S1000Fと比較してライダー側に14mm近づき、幅が23mm広く設定されています。この幅広ハンドルはテコの原理を利用して少ない力での操作を可能にしますが、一方で、腕が伸びきってしまいやすいというデメリットも併せ持っています。
腕が伸びきった状態では肩に力が入りやすく、ハンドルのセルフステア(バイクが自然に向きを変えようとする力)を阻害してしまいます。特に低速旋回やUターン時に「ハンドルが遠い」「取り回しにくい」と感じる場合は、適切な荷重移動ができていない可能性が高いでしょう。
改善のためのアプローチとしては、まず乗車姿勢を見直すことが挙げられます。シートの前寄りに座り、軽く前傾姿勢を取ることで、ハンドルまでの距離が自然に縮まります。肘にゆとりを持たせ、軽く曲げた状態をキープすることが理想的です。
それでもポジションが合わないと感じる場合は、社外品のハンドルアップスペーサーの導入を検討する価値があります。7mm程度のアップと7mmのバック調整が可能な製品が市販されており、ハンドル位置を微調整することで、より自然な操作感を得られるケースもあります。
なお、ラバーマウントされたハンドルは、直接的な路面フィードバックがやや薄まるという特性があります。この点については、走り込むうちに「フィルターを通した情報」の読み取り方に慣れてくるため、焦らず距離を重ねることも一つの解決策です。
ギヤ選択とエンジンブレーキの活用方法
GSX-S1000GTの旋回性を走りの面から大きく改善できるのが、適切なギヤ選択とエンジンブレーキの活用です。GSX-R1000直系のエンジンは低速域から非常に強力なトルクを発生させるため、高いギヤのまま(例えば5速のまま)コーナーを抜けるような走り方も物理的には可能です。しかし、このような走り方では、エンジンブレーキによるフロント荷重の生成が不十分になり、旋回が鈍くなりがちです。
峠道やワインディングで旋回性を高めたい場合は、コーナー進入前に2速や3速まで積極的にシフトダウンすることを意識してください。ギヤを落とすことでエンジンブレーキが強まり、自然とフロントフォークが沈み込んでフロント荷重が増加します。フロントタイヤのグリップ感が高まることで、安心感を持ってコーナーへ飛び込めるようになるでしょう。
GSX-S1000GTには双方向のクイックシフターが標準装備されているため、クラッチ操作なしでスムーズなシフトダウンが可能です。ブレーキングと同時にシフトダウンを行い、コーナー進入時に適切な回転域にエンジンを置いておくことで、立ち上がりのアクセルコントロールもしやすくなります。
コーナー立ち上がりでは、アクセルを開けることでリアサスペンションが沈み込み、トラクションが生まれます。この「加速による安定」を利用すれば、コーナー後半でも車体が安定し、狙ったラインをトレースしやすくなります。
言い換えれば、GSX-S1000GTで鋭い旋回を得るための鍵は、「減速でフロントに荷重を載せ、加速でリアに荷重を載せる」というメリハリのある走りにあります。高いギヤでゆったり流すのもツアラーとしての楽しみ方ですが、峠道ではギヤを積極的に使い、エンジンの力を旋回の武器に変えていく走りを試してみてください。
タイヤの偏摩耗やメンテナンス不足にも注意
最後に見落とされがちですが、車体のメンテナンス状態がハンドリングに直結することも忘れてはなりません。いくらサスペンションを調整し、ライディングを工夫しても、車体のコンディションが万全でなければ本来の旋回性能は発揮されないのです。
まずチェックすべきはタイヤの状態です。前述の通り、タイヤの偏摩耗はハンドリングを大きく悪化させます。特にフロントタイヤの段減りは、倒し込みの初期段階で不自然な抵抗を感じる原因となり、リアタイヤのセンター部分がフラットに摩耗すると、バンク角がある程度までは寝にくく、一定の角度を超えると急に倒れ込むという危険な挙動にも繋がりかねません。定期的にタイヤの残溝と形状を確認し、偏摩耗が見られたら早めの交換を検討しましょう。
フロントフォークの整列状態も重要なチェックポイントです。ハンドルのブレや直進時の違和感がある場合は、フォークの歪みやホイールバランスの狂いが原因である可能性があります。転倒歴がなくても、段差の通過や日常の使用でわずかにズレが生じることはあるため、定期点検時にショップで確認してもらうと安心です。
ブレーキシステムのコンディションも旋回に影響します。ブレーキの効きが悪い状態では、コーナー進入時の十分な減速と姿勢制御ができず、旋回開始のタイミングが遅れてしまいます。ブレーキパッドの残量やフルードの劣化は、安全面だけでなくハンドリングの面でも見逃せない項目です。
チェーンのテンションも地味ながら影響があります。チェーンが緩すぎると加減速時のギクシャク感が増し、旋回中の安定性を損ないます。メーカー指定の張り具合を維持し、定期的な清掃と注油を欠かさないことが、快適なハンドリングを保つ基本です。
総括:GSX-S1000GTが曲がらないと感じる原因と対策を徹底解説
- GSX-S1000GTが曲がらないと感じるのは性能不足ではなくツアラー設計の特性
- エンジンはGSX-R1000由来の999cc直4でフレームは専用設計のアルミツインスパー
- 直進安定性を重視したキャスター角25°とトレール100mmの設定が要因
- Ninja 1000SXはキャスター角24°でGSX-S1000GTより旋回応答性が高い傾向
- 現行Tracer 9 GT+はホイールベース1,500mmでさらに安定志向の設計
- リアサスペンションのプリロードを体重に合わせて調整すると旋回性が向上
- サスペンションは一気に変えず1段ずつ調整して効果を確認する
- タイヤ交換は最も体感効果が大きくミシュラン ROAD 6が高評価
- タイヤの偏摩耗はハンドリング悪化の原因になるため定期確認が必要
- パニアケースを外すだけで旋回の軽快さが大きく変わる
- トップケースは重心を上げるため旋回への影響が特に大きい
- 峠道ではSDMSのBモードを選択しスムーズなアクセル操作を心がける
- ハンドル幅23mm拡大は先代GSX-S1000F比でありポジション調整が有効
- ニーグリップと外足荷重を意識した能動的なライディングが鍵
- コーナー前のシフトダウンでエンジンブレーキを活用しフロント荷重を確保
