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ヤマハのスーパースポーツバイク「YZF-R6」は、その圧倒的なパフォーマンスと洗練されたデザインで多くのライダーを魅了してきました。特にYZF-R6の最高速度への関心は高く、理論値と実測値の両面から検証すると興味深い結果が見えてきます。
このバイクの馬力はモデル年によって117〜129PSと変化しており、高回転型エンジンの特性が最高速にも大きく影響しています。詳細なスペックを見ると、599ccの水冷4ストロークDOHC4バルブ並列4気筒という先進的な設計が採用され、燃費性能と航続距離のバランスも考慮されています。
残念ながらYZF-R6の生産は2020年に終了してしまいましたが、なぜ生産終了となったのか、その背景には排ガス規制や市場動向が関係しています。現在では中古市場での価値が高騰しており、特に最終型モデルは希少価値から高額で取引されているようです。この記事では、YZF-R6の最高速を中心に、その性能や魅力を徹底的に解説していきます。
• YZF-R6の理論上および実測による最高速度の具体的な数値と検証結果
• 最高速度を左右するギア比や空力特性などの要因とスプロケット交換による影響
• モデル年ごとの馬力の変遷と高回転エンジンの特性がもたらすパフォーマンス
• 生産終了の背景とレースベース車の現状、中古市場での価格高騰状況
YZF-R6の最高速はどれくらいなのか

出典:YAMAHA公式
- YZF-R6の公称最高速度
- 実測値による最高速度の検証
- YZF-R6の馬力はいくつですか?
- 最高速度を左右する要因
YZF-R6の公称最高速度
ヤマハYZF-R6の公称最高速度は、メーカーから正確には公表されていません。これは多くの高性能スポーツバイクに共通しており、法規制や安全面への配慮から、カタログなどの公式資料で最高速度を明示しないことが一般的です。
しかし、YZF-R6のスペックから推測すると、理論上は250km/h以上の速度を出すことが可能と考えられます。特に2005年以降のモデルは高回転型エンジンの特性が強化されています。最高出力はモデル年によって118PSから129PSを発揮し、一部モデルでは最高回転数が14,500rpmに達します。
このエンジン性能に加え、YZF-R6は空力性能にも優れています。2017年のフルモデルチェンジでは、YZF-R1と同系統の新設計カウルデザインが採用されました。これにより空気抵抗を示すCdA値が8%低減したとヤマハから公式に発表されています。この空力特性は、高速域での安定性と最高速度の向上に貢献しています。
注目すべきは、公式な発表がないにもかかわらず、YZF-R6が600ccクラスで屈指の最高速度を誇るマシンの一つと評価されている点です。このことは世界スーパースポーツ選手権(WSS)での活躍にも表れています。2017年から2022年まで6年連続でチャンピオンマシンに輝いた実績が、そのポテンシャルを証明しています。
公道での法定速度を超える走行は法律で禁止されています。バイクの性能を試す場合は、必ずサーキットなどの専用コースを利用してください。
実測値による最高速度の検証
YZF-R6であーる!!!!🤓 pic.twitter.com/kSGlcINzkK
— あず (@Azusa_14r) March 13, 2025
様々なライダーによるテストやメディアの計測によると、YZF-R6の最高速度はメーター読みで約270km/hに達することが確認されています。具体的な記録としては、2005年モデル(5SL後期)で実測時速280km程度、2010年モデルでは約257km/hというデータが存在します。
これらの数値は、モデル年式、バイクのコンディション、計測方法、ライダーの体格やライディングフォームによって変動します。興味深いことに、2010年モデルに関しては、計算上の理論最高速度(詳細は「ギア比と最高速度の関係」セクションで後述)と実測値がほぼ一致します。この事実は、YZF-R6のエンジン性能と理論計算の精度の高さを示していると言えるでしょう。
また、一部のYouTube動画では295km/h(183mph)までの加速が記録されている例もあります。ただし、これらは個人による投稿であり、計測方法や精度は不明です。GPS非搭載のメーター読みである可能性も考慮する必要があり、あくまで参考情報と捉えるべきです。
ライバル車種との比較データも参考になります。例えば、WEBヤングマシンによる袖ヶ浦フォレストレースウェイでの計測では、YZF-R6の最高速が191.44km/hだったのに対し、より排気量の大きいNinja ZX-6R(636cc)は197.09km/hを記録しました。この差は、両車のパワー差が影響した結果と考えられます。
MV Agusta F3 675との比較テストにおいても、同様に排気量で上回るF3 675が若干優位な結果を示しましたが、その差は予想よりも小さかったと報告されています。これは、YZF-R6の優れた空力性能やギア比設定が、排気量の不利を補っている可能性を示唆しています。
メーターに表示される速度と実際の速度との間には、通常乖離があることも考慮すべき点です。多くのバイクのスピードメーターは、実際の速度よりもやや高めに表示される傾向があります。メーター読みの最高速度は実速度より5%から10%程度高く表示されている可能性があるので注意が必要です。そのため、正確な最高速度を知るためには、専用の計測機器を用いた測定が不可欠です。
最後に、極限的な高速走行は、専門的な技術、適切な安全装備、そして何よりもサーキットなどの専用施設が必要です。YZF-R6のポテンシャルを体験したいライダーは、サーキット走行会などの安全な環境で経験を積むことをお勧めします。
YZF-R6の馬力はいくつですか?

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YZF-R6の馬力は、モデル年式によって異なりますが、概ね117馬力(PS)から129馬力の範囲です。この数値は、スーパースポーツバイクの中でも特に高回転型エンジンを特徴とするYZF-R6ならではの値と言えます。
初代モデル(1999年-2000年)は、4ストロークDOHC4バルブ並列4気筒エンジンから120PSの最高出力を発揮しました。当時、「1リッターあたり200馬力」という開発目標を達成し、同クラスのライバル車を大きく引き離す性能を持っていました。
2001年から2002年のモデルでは、エンジン内部パーツの改良が施され、最高出力は117PSと若干控えめになりましたが、より扱いやすい特性へと進化しています。
2003年から2005年のRJ05(5SL)モデルでは、馬力は再び123PSまで引き上げられました。この時期からフューエルインジェクション方式が採用され、より精密な燃料供給が可能になっています。
2006年から2016年のRJ11モデルでは、電子制御スロットル(YCC-T)が採用され、最高出力は127PSに到達しました。エンジンのボア・ストロークも67.0mm×42.5mmへと変更され、よりショートストローク化されたことで高回転型の特性が一層強化されています。
最終型となる2017年から2020年のRJ274(BN6)モデルでは、欧州の排出ガス規制であるEURO4に対応するため、最高出力は118PSとやや抑えられました。しかし、低速域でのトルク感が若干増加し、公道での乗りやすさは向上したと評価されています。
特筆すべきは、YZF-R6がその排気量に対して非常に高い出力を発生させている点です。600cc前後のクラスで120PSを超えるエンジンは、開発当時の技術水準では極めて先進的でした。これを実現するために、ヤマハは最高回転数を14,500rpmという高回転域に設定し、10,000回転を超える領域でのパワーバンドを重視したエンジン設計を行っています。
しかし、この高回転型エンジンには特徴的な出力特性があります。低回転域ではトルクが比較的穏やかで、エンジン回転が上昇するにつれて加速力が増していきます。具体的には、8,000rpmを超えると力強さが顕著になり、特に10,000rpm以上の領域では爆発的な加速を見せます。
この特性は、高回転域を活かした走りが得意なライダーにとっては非常に魅力的です。一方で、市街地走行など低速域を多用する場面では、やや扱いにくさを感じることもあります。
このように、YZF-R6の馬力は単に数値が高いだけでなく、その独特な出力特性とエンジンフィーリングが多くのファンに支持される理由となっています。高回転まで気持ちよく吹け上がるエンジンは、サーキット走行はもちろん、ワインディングロードでの走りにおいても大きな魅力です。
最高速度を左右する要因
軽い速い良く回る pic.twitter.com/9ScpjfkMsG
— ライゼン@ライダー YAZAKI SPIRIT YZF-R6 (@99_YZF_R6) May 4, 2024
YZF-R6の最高速度は、単にエンジンのパワーだけで決まるものではありません。実際には複数の要因が複雑に絡み合い、最終的な速度が決定されます。
まず最も基本的な要因として、エンジン出力とギア比の組み合わせが挙げられます。YZF-R6は6速トランスミッションを採用しており、最終減速比と各ギアの変速比が最高速度に大きく影響します。たとえば2010年型の6速ギアの変速比は1.150で、14,500rpm時の理論速度は約257km/hです。
次に影響が大きいのが空力特性です。前述の通り、YZF-R6は2017年モデルでフルモデルチェンジを受け、空気抵抗を示すCdA値が8%も低減しました。カウルの形状やウインドスクリーンの角度、そしてライダーの乗車姿勢など、これらの要素すべてが高速域での空気抵抗を減らし、より高い最高速度を実現するために重要となります。
車両重量も無視できない要素です。YZF-R6の乾燥重量は約160kg台(装備重量は約190kg)と、1000ccクラスのスーパースポーツバイクと比較すると10kg程度軽量です。この軽さは加速性能に寄与するだけでなく、エンジンパワーを速度に変換する際の効率も高めます。
タイヤの選択も最高速度に影響を与えます。タイヤの外径が大きくなれば、同じエンジン回転数でも理論上の速度はわずかに上昇します。また、タイヤの種類によって転がり抵抗やグリップ性能が異なり、これらも最高速に影響を与える可能性があります。YZF-R6の標準タイヤサイズはフロントが120/70ZR17、リアが180/55ZR17です。
スプロケットの歯数を変更することによっても、最高速度は変化します。例えば、フロントスプロケットを標準の16丁から17丁に変更すると、理論上の最高速度は約16km/h向上します。ただし、これは加速性能と引き換えに最高速度を得るための変更となります。
外部環境要因も重要です。気温、湿度、標高といった気象条件はエンジン出力に影響を及ぼします。また、風向きや風速も実際の最高速度に大きく作用し、追い風の状況下では理論値以上の速度が記録されることもあります。
ライダー自身の要因も最高速度に関わってきます。体重、身長、そして特にライディングフォーム(乗車姿勢)は空気抵抗を大きく左右します。プロのレーサーのように完全に伏せた姿勢を取ることで、空気抵抗が減少し、最高速度の向上が期待できるでしょう。
最後に、バイクのメンテナンス状態も見逃せません。エンジンオイルの粘度、チェーンの張り具合、各部ベアリングの摩擦など、日頃のメンテナンスが適切に行われているかどうかは、これらの細かい要素の積み重ねとして最終的な速度に影響を与えます。
このように、YZF-R6の最高速度は複合的な要因によって決定されます。単に速さを追求するだけでなく、これらの要素のバランスを理解することで、より安全かつ効果的にマシンのポテンシャルを引き出すことができるでしょう。
YZF-R6の最高速を支える基本スペック

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- YZF-R6の詳細スペック解説
- ギア比と最高速度の関係
- 燃費性能と航続距離
- 生産終了の理由と中古市場の高騰
- レースベース車は復活する?
YZF-R6の詳細スペック解説
YZF-R6は、1999年から2020年まで生産されたヤマハのミドルクラススーパースポーツバイクで、その間に数度のモデルチェンジを経験しています。ここでは、主に最終モデルとなる2017年から2020年モデル(型式RJ274/BN6)を中心に、詳細なスペックを解説します。
エンジンは、排気量599ccの水冷4ストロークDOHC4バルブ並列4気筒を搭載。ボア(内径)67mm×ストローク(行程)42.5mmというショートストローク設計により、高回転型のエンジン特性を実現しています。圧縮比は13.1:1と高く、最高出力は87kW(118PS)を14,500rpmで、最大トルクは62N・m(6.3kgf・m)を10,500rpmで発生します。
車体寸法は、全長2040mm、全幅695mm、全高1150mmとコンパクトです。ホイールベースは1375mmで、ミドルクラスのスーパースポーツとしては標準的。シート高は850mmとやや高めで、足つき性は良いとは言えません。装備重量は190kgで、同クラスの他車種と比較して突出して軽量というわけではありませんが、実際の走行フィーリングは非常に軽く感じられるのが特徴です。
足回りに関しては、フロントサスペンションにインナーチューブ径43mmの倒立式KYB製フォークを採用。リアサスペンションもKYB製を採用し、前後ともに伸側・圧側の減衰力調整とプリロード調整が可能です。ブレーキシステムは、フロントに外径320mmのダブルディスクと対向4ポットキャリパー、リアに外径220mmのシングルディスクを装備。タイヤサイズはフロントが120/70ZR17、リアが180/55ZR17です。
電子制御システムも充実しており、6段階に調整可能なトラクションコントロールシステム、3種類の走行モードを選択できるパワーモード、シフトアップ操作を補助するクイックシフター(アップシフトのみ対応)、そしてABS(アンチロックブレーキシステム)などを標準で装備しています。
燃料タンク容量は17リットルで、実際の燃費はおよそ17km/L程度とされています。この数値から計算すると、満タン時の航続距離は約290km前後となります。ただし、高回転域を多用するようなスポーティな走行スタイルでは燃費が大幅に低下するため、実際の航続距離はさらに短くなる可能性があります。
スタイリング面では、2017年のフルモデルチェンジでYZF-R1と共通のデザインコンセプトが採用され、シャープなM字型のフロントマスクや流麗なサイドカウルが特徴的です。LEDヘッドライトやポジションランプも採用され、優れた視認性と先進的な外観を両立しています。
熱対策については、一般的なスポーツバイクと比較すると十分とは言えず、特に夏場の市街地走行などでは下半身、とりわけ左足の付け根部分に強い熱を感じることがあります。これはハイパワーエンジンを搭載するスーパースポーツバイクの宿命とも言えます。
低回転域でのトルク不足もYZF-R6の特徴の一つで、エンジン回転数が4,000rpm以下では、400ccクラスのバイクと加速感に大きな差を感じないかもしれません。しかし、6,000rpmを超えると徐々に加速力が増し、8,000rpm以上ではその差が歴然となります。高回転型エンジンの特性をよく理解して運転することが重要です。
このように、YZF-R6は妥協のないサーキット志向のスペックを持ち、その高い完成度で多くのファンに支持されています。一方で、その過激な性能ゆえに、日常的な使用にはあまり適さない側面も持ち合わせていることを理解した上で楽しむことが大切です。
ギア比と最高速度の関係
YZF-R6
長所
速いカッコいい短所
Uターンできない pic.twitter.com/tK0e95X5qc— じょるじゅ 伝説の雨男 SKMotorcyclePhotoWorks (@juryujuryujoru) October 21, 2021
YZF-R6のギア比設定は、その最高速度と加速性能に直接的な影響を与えています。このバイクは6段変速のトランスミッションを採用しており、各ギアの比率が巧みに設計されています。
2010年モデルを例に取ると、各ギアのギア比と、14,500rpmで最高出力に達した際の理論上の最高速度は以下の通りです(一次減速比2.073、二次減速比2.813、タイヤ外径など諸条件により計算値は変動します)。
上記の表が示すように、フルスロットルで各ギアを最高回転数まで回した場合、最終的に6速で約257km/hという最高速度に達することが理論上可能です。この値は、前述の通り実測値とほぼ一致しており、YZF-R6のエンジン性能と理論計算の精度の高さを示しています。
注目すべきは、YZF-R6のギア比設定が「レシオカバレッジ2.246」という、非常に密接なギア比間隔(クロスレシオ)を持っている点です。これは1速のギア比と6速のギア比の幅を示し、この値が小さいほど各ギア間のステップが小さく、シフトチェンジ時のエンジン回転数の落ち込みが少なくなります。その結果、加速をスムーズに維持しやすくなります。
具体的には、1速で14,500rpmまでエンジンを回してから2速にシフトアップすると、エンジン回転数は約11,220rpmまで落ち込みます。これは約23%の回転数減少ですが、YZF-R6のエンジンの特性上、この回転数領域でもまだ十分なパワーを発揮できるため、加速の途切れを最小限に抑えることが可能です。
このギア比設定は、特にサーキット走行において最適なパフォーマンスを引き出すために緻密に計算されています。各ギア間の速度差は20km/hから30km/h程度に設定されており、コーナーの立ち上がりからストレートエンドまで、スムーズで力強い加速を可能にしています。
また、公道走行での実用性にも配慮が見られます。例えば、6速ギアでの時速100km巡航時のエンジン回転数は約5,650rpmとなります。これは最高出力回転数の約39%に相当し、高速巡航時のエンジンの振動や燃費を適正な範囲に保つように設計されています。
スプロケットの交換による最高速度の変化も興味深い点です。例えば、標準のフロントスプロケットが16丁の場合、これを17丁に変更すると、二次減速比が小さくなり、理論上の最高速度は約16km/h向上します。逆に15丁に変更すると二次減速比が大きくなり、最高速度は約16km/h低下しますが、加速力は向上する傾向にあります。
ただし、こうしたスプロケットの変更はスピードメーターの表示誤差を大きくする原因となることがあり、あまりにも極端な変更は車検の基準に適合しない可能性も出てきます。また、加速力と最高速度は基本的にトレードオフの関係にあります。自身の走行スタイルや目的に合わせた適切な設定を選ぶことが重要です。
このように、YZF-R6のギア比設定は、エンジンの高回転特性を最大限に活かし、サーキットでの速さと公道でのある程度の扱いやすさのバランスを取った巧みな設計と言えるでしょう。
燃費性能と航続距離
YZF-R6を使っての初めてのツーリングでしたが、1日で490km走行しても問題ありませんでした。
ライポジに関しても、現在太ももが筋肉痛なくらいで、それほど負荷もなかったです。
ただし、燃費とタンク容量のせいで、山道に入る前は確実にスタンドに入っておく必要があると思いました。#yzfr6 pic.twitter.com/wDgmcSzZ6B— きさらぎじゅん@YZF-R6 (@RELLIK_REDRUM) October 30, 2020
YZF-R6の燃費性能は、高性能なスーパースポーツバイクとしては平均的な水準にあり、乗り方によって大きく変動します。一般的な走行条件における燃費は、おおよそ1リットルあたり16kmから17kmほどです。この数値は、モデル年式、ライダーの運転スタイル、走行環境によって変わってきます。
都市部での走行では、信号による停止や頻繁な発進・加速が繰り返されるため、燃費が悪化する傾向にあります。リッタークラスのスーパースポーツバイクと同程度の、1リットルあたり13kmから15km程度になることも珍しくありません。
一方、高速道路での巡航走行では状況が少し変わります。時速80km/h程度の一定速度で走行する場合、燃費は向上し、1リットルあたり20km前後に達することもあります。しかし、時速100km/hを超える速度域になると、空気抵抗の増加により、再び燃費は低下する傾向を示します。
興味深い比較として、YZF-R6のライバルと目される他メーカーのミドルクラススーパースポーツバイクとの燃費テストデータがあります。例えば、トライアンフ デイトナ675Rが高速道路巡航時により良好な燃費を示す例があります。これに対し、YZF-R6も同条件で健闘しますが、エンジン形式や設計思想によって差が出ることがあります。
YZF-R6の燃料タンク容量は17リットルですので、この容量と平均燃費から計算すると、満タン時の航続距離は約270kmから290km程度となります。しかし、高回転域を多用するサーキット走行やスポーティなワインディング走行では、燃費が1リットルあたり10kmから12km程度まで落ち込むこともあります。そのような場合の航続距離は、170kmから200km程度と大幅に短くなります。
ツーリングでYZF-R6を使用する際には、この航続距離を考慮したルート計画が重要になります。特に山間部などガソリンスタンドが少ないエリアを走行する場合は注意が必要です。YZF-R6には燃料計が装備されていないため(燃料警告灯は装備)、トリップメーターを活用して走行距離を把握し、給油タイミングを管理することをお勧めします。
燃費に影響を与える要素としては、ギアの使い方も重要です。YZF-R6は6速ギアで時速100km走行時のエンジン回転数が約5,650rpmであり、積極的に高いギアを使うことで燃費向上に繋げることが可能です。
また、日頃のメンテナンス状態も燃費に影響します。エアクリーナーエレメントの汚れ、スパークプラグの劣化、タイヤの空気圧不足などは、いずれも燃費悪化の原因となります。定期的な点検と適切なメンテナンスによって、最適な燃費性能を維持することが大切です。
YZF-R6に燃費メーターは装備されていませんが、車両のコンディションを良好に保ち、適切なライディングスタイルを心がけることで、十分な航続距離を確保できます。ただし、その圧倒的な走行性能を存分に楽しむと、必然的に燃費はある程度犠牲になるということも理解しておく必要があるでしょう。
生産終了の理由と中古市場の高騰

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ヤマハYZF-R6の公道仕様モデルは、2020年型を最後に生産終了となりました。この決断には、いくつかの重要な理由が複合的に絡んでいます。
最大の理由は、欧州を中心とした世界各国で年々厳格化される排出ガス規制(特に欧州のEURO5)への対応コストの問題です。YZF-R6のような高回転・高出力型のエンジンでは、厳しい排出ガス規制をクリアするための技術的なハードルが高く、開発コストも膨大になるという課題がありました。
また、ミドルクラススーパースポーツ(主に600ccクラス)の市場自体が、世界的に縮小傾向にあることも大きな要因です。近年ではよりエントリーユーザー向けの400cc以下のクラスや、絶対的なパワーと最新技術を求めるライダー向けの1000ccクラスに市場が二極化する傾向が見られます。
さらに、YZF-R6は日本国内においてはヤマハ発動機による正規販売ラインナップには含まれず、主に海外市場向けのモデルを輸入販売業者が「逆輸入車」として取り扱う形で販売されていました。
こうした背景から公道仕様モデルの生産は終了となりましたが、一方でYZF-R6はサーキット走行専用の「レースベース車」として、生産・販売が継続されています。これは、YZF-R6が依然として高い競争力を持ち、多くのレーシングチームやライダーから支持されていることが評価された結果と言えるでしょう。
公道仕様モデルの生産終了に伴い、中古バイク市場ではYZF-R6の価格が高騰しています。特に、最終モデルとなった2017年以降のBN6型は、そのデザインや熟成された性能、そして希少性から高値で取引される傾向が顕著です。
中古車価格の高騰には、2020年初頭からの新型コロナウイルス感染症のパンデミックによるバイク需要の急増、新車の供給が途絶えたことによる需給バランスの変化、そしてYZF-R6自体の耐久性の高さやレースシーンでの実績などが複合的に影響しています。
中古市場での具体的な価格帯は、車両の年式、走行距離、コンディションによって大きく異なりますが、状態の良い最終モデルなどでは新車時の価格に匹敵する、あるいは上回る価格で取引されるケースも見られます。
このような中古市場での価格高騰は、当面の間続く可能性が高いと専門家の間では見られています。YZF-R6はその希少性と高いパフォーマンスから、今後も中古市場で高い価値を維持し続ける可能性が高いモデルと言えるでしょう。
レースベース車は復活する?
「YZF-R6 レースベース車」を受注生産で発売 - ニュースリリース | ヤマハ発動機株式会社
欲しいかも😁⤴️ https://t.co/ONprgws92H
— Camel (@Camel6788) September 28, 2024
YZF-R6の公道仕様モデルは2020年に生産終了となりましたが、サーキット走行やレース活動に特化した「YZF-R6 レースベース車」は、現在も生産・販売が継続されています。この状況を踏まえ、公道仕様のYZF-R6が将来的に復活する可能性について見ていきます。
まず、直近の情報として、2025年モデルの「YZF-R6 レースベース車」が2024年9月にヤマハから発表され、受注期間限定で販売されます。納車開始は2025年2月28日からが予定されており、価格は137万5000円(消費税込)です。このモデルは、基本的に2020年型の公道仕様YZF-R6(欧州仕様)をベースとしています。
このYZF-R6 レースベース車には、トラクションコントロールシステムやクイックシフターなどの電子デバイスに加え、YZF-R1レースベース車と同型の高性能なフロントサスペンションやフロントブレーキなどが採用されています。ただし、2025年モデルのレースベース車は、従来モデルからの主な変更点はなく、基本設計は2020年モデルからほぼ変わっていません。
重要なのは、このレースベース車は国土交通省の型式認定を受けていないため、ナンバープレートを取得して公道を走行することができない点です。また、製品保証(クレーム保証)の対象外製品となっています。
同時に注目すべきは、ヤマハが2025年モデルとして「YZF-R1 レースベース車」も発表している点です。こちらのYZF-R1 レースベース車は、空力特性をさらに追求した先進的な設計が取り入れられています。一方、YZF-R6 レースベース車は基本設計を継承しており、このことからもヤマハが現行YZF-R6の基本設計に大きな新規投資を行っていない状況がうかがえます。
レーシングシーンにおけるYZF-R6の立ち位置も変化しています。2024年シーズンまでは、世界スーパースポーツ選手権(WSS)でYZF-R6が活躍しました。しかし、WSSのレギュレーション変更に伴い、ヤマハは2025年シーズンから、MT-09の3気筒エンジンをベースとする新型マシン「YZF-R9」をWSSに投入することを決定しています。これにより、YZF-R6は2024年シーズンをもって、WSSの主力参戦モデルとしての役目を終えることになります。なお、WSSではYZF-R6が2017年から2022年まで6連覇を達成しましたが、2023年以降はレギュレーション変更もあり、新たなマシンがその歴史を刻んでいます。
これらの状況を踏まえて、YZF-R6の公道仕様モデルが復活する可能性については、残念ながら厳しい見方をせざるを得ません。排出ガス規制は今後もさらに厳格化されることが予想され、高回転型4気筒エンジンで対応することは技術的にもコスト的にも非常に困難です。また、ミドルクラススーパースポーツの市場規模が依然として縮小傾向にあるという状況も変わっていません。
一方で、ヤマハは近年のスポーツバイク市場の動向に対応する形で、新たなモデルラインナップを展開しています。例えば、2021年にはMT-07の並列2気筒エンジンをベースとしたフルカウルスポーツモデル「YZF-R7」を発売しました。
さらに、前述の通り、3気筒エンジンを搭載した新型スーパースポーツモデル「YZF-R9」の開発が進められており、こちらはレースシーンでの活躍も期待されています。このYZF-R9が公道仕様として登場すれば、YZF-R6とは異なる新たな魅力を持つスーパースポーツとして市場に受け入れられる可能性があります。
しかし、たとえYZF-R9が登場したとしても、それはYZF-R6の「復活」というよりは、あくまで新しい世代のモデルの誕生と見るべきでしょう。YZF-R6の最大の魅力であった、官能的な超高回転型4気筒エンジンのフィーリングやその先鋭的なキャラクターは、現代の様々な規制や市場の要求の中では再現が非常に難しいと考えられます。
こうした状況から総合的に判断すると、YZF-R6の公道仕様モデルが近い将来に再び市場に登場する可能性は低いと言わざるを得ません。レースベース車としての生産は当面継続されると思われますが、公道で乗ることができるYZF-R6を求めるライダーにとっては、状態の良い中古車を探すか、現在所有している車両を大切に維持していくことが、最も現実的な選択肢となるでしょう。
総括:YZF-R6の最高速度とスペックを網羅!生産終了の理由と中古相場
この記事をまとめると、
• YZF-R6の公称最高速度はメーカーから公表されていないが理論上は250km/h以上
• 実測値では約270km/h(メーター読み)に達することが確認されている
• 2010年モデルの理論値では6速・14,500rpmで約257km/hとなる
• 袖ヶ浦フォレストレースウェイでの計測ではYZF-R6が191.44km/h、Ninja ZX-6Rが197.09km/h
• YZF-R6の馬力はモデル年により117馬力~129馬力と変化している
• 2017年のフルモデルチェンジでは空気抵抗(CdA値)が8%低減した
• 最高速度に影響する主な要因はエンジン出力、ギア比、空力特性、車両重量など
• 標準的なフロントスプロケット16丁から17丁に変更すると理論上の最高速度は約16km/h向上する
• 最終モデル(2017-2020年)は599cc・水冷4ストローク・DOHC並列4気筒エンジンを搭載
• 最終モデルの最高出力は118PS/14,500rpm、最大トルクは6.3kgf・m/10,500rpm
• YZF-R6の燃費は約16~17km/Lで燃料タンク容量17Lから航続距離は約270~290km
• 2020年をもって公道仕様モデルの生産が終了し、以降はレースベース車のみ販売
• 生産終了の主な理由は排出ガス規制(EURO5)への対応コストと市場縮小
• 2017年から2022年までWSSで6年連続チャンピオンマシンとなった実績がある
• 中古市場では希少性から価格高騰が続いており、良好な状態の車両は高値で取引されている