
出典:YAMAHA公式
YZF-R1が曲がらないと感じて悩んでいませんか。ヤマハが誇るスーパースポーツであるR1は、本来なら優れた旋回性能を持つマシンとして知られています。しかし実際にオーナーになってみると、思ったように曲がってくれないという声は少なくありません。この現象には、サスペンションの設定やクロスプレーンエンジン特有の挙動、さらにはライダー自身の操作方法など、複数の要因が絡み合っているのです。本記事では、YZF-R1が曲がらない原因を徹底的に分析し、具体的な解決策をお伝えしていきます。
- YZF-R1が曲がらないと感じる主な原因
- サスペンション調整による旋回性の改善方法
- 電子制御システムの最適な設定
- ライディングテクニックで旋回力を引き出すコツ
YZF-R1が曲がらないと感じる原因とは?

Ride Style・イメージ
- サスペンション設定が硬すぎる問題
- クロスプレーンエンジンの特性を理解する
- 年式別に異なるハンドリングの癖
- タイヤやステムベアリングの劣化
サスペンション設定が硬すぎる問題
YZF-R1が曲がらない最大の原因として挙げられるのが、純正サスペンションの設定です。特に2015年以降のモデルでは、サーキット走行を主眼に置いた硬めのセッティングが施されており、公道での使用には適していないケースが多く見られます。
具体的には、フロントサスペンションのプリロードが強く設定されているため、ブレーキをかけてもフォークが十分に沈み込みません。コーナー進入時にフォークが縮まないと、キャスター角が立たず旋回姿勢を作れないのです。一方でリアサスペンションは比較的柔らかく設定されており、加速時に沈み込みすぎてフロントの接地感が薄れてしまいます。
この前高後低のバランスが、アンダーステア傾向を生み出す主因となっています。日本人ライダーの平均的な体重では、純正設定のままではサスペンションが適切に動作しないことが珍しくありません。
また、純正設定は高速域での安定性を重視しているため、低中速域では過剰な安定性として作用してしまいます。ワインディングや峠道といったストリートレベルの速度域では、この安定性が回頭性の悪さとして体感されることになるでしょう。
クロスプレーンエンジンの特性を理解する
YZF R1
長所:"クロスプレーンエンジン"
短所:"クロスプレーンエンジン" pic.twitter.com/3oPwFYEVxy
— やーかず (@yakazRN23N) October 21, 2021
2009年以降のYZF-R1に搭載されているクロスプレーンクランクシャフトは、従来の直列4気筒エンジンとは根本的に異なる特性を持っています。このエンジン構造と周辺システムの組み合わせが、曲がらないと感じる一因になっていることを理解しておく必要があります。
従来のフラットプレーンクランクを採用したエンジンでは、スロットルを戻すと強いエンジンブレーキが発生しました。このバックトルクがフロント荷重を自然と増加させ、旋回力を生み出す補助となっていたのです。一方でクロスプレーンエンジン搭載車では、スロットルオフ時の減速感が穏やかに感じられるケースがあります。
この減速感の違いには複数の要因が関係しています。エンジン自体の慣性特性に加えて、スリッパークラッチの作用やEBM(エンジンブレーキマネジメント)などの電子制御、さらにはセッティングによってもオフスロットル時の挙動は変化します。そのため、単にスロットルを戻すだけではフロントへの荷重移動が作りにくいと感じる場合があるのです。
クロスプレーンエンジンの利点は、燃焼トルクをリニアに取り出せることでタイヤのグリップを感じやすい点にあります。この特性を活かすためには、ライダーが意図的にブレーキを残したり、身体を使って積極的にフロントに荷重を乗せる操作を意識することが求められます。
年式別に異なるハンドリングの癖

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YZF-R1は世代によって異なるハンドリング特性を持っており、年式ごとの癖を把握することが旋回性向上の第一歩となります。
| 世代 | 年式目安 | 主な特徴 | 曲がらない主因 |
|---|---|---|---|
| 5VY世代 | 2004-2006頃 | 5バルブエンジン、センターアップマフラー | 高重心、低速トルク不足 |
| 4C8世代 | 2007-2008頃 | 4バルブ化、ピーキーな出力 | 過度な安定性、扱いにくい出力特性 |
| 初代CP世代 | 2009-2014頃 | クロスプレーン初採用 | 車重増加、減速感の違い |
| 現行CP世代前期 | 2015-2019頃 | 大幅軽量化、6軸IMU搭載 | 純正サスが硬すぎる |
| 現行CP世代後期 | 2020-2024頃 | EBM追加、電子制御強化 | 電子制御設定の最適化が必要 |
上記のモデルコードや年式区分は市場や仕向地によって異なる場合があります。正確な型式は車検証やフレーム刻印でご確認ください。
5VYや4C8といったセンターアップマフラー世代は、シート下にマフラーがあるため重心が高く設計されています。低速域でのトルクが薄いため、パワーバンドを外すとトラクションがかかりにくい傾向があります。
初代クロスプレーン世代は、車体重量の増加とオフスロットル時の減速感の違いがネガティブ要素として挙げられます。2015年以降は電子制御が複雑化しており、設定が合っていないと介入過多で曲がりにくくなることがあるのです。
タイヤやステムベアリングの劣化
今年年末にYZF-R1のオーリンズオーバーホールするけどついでにステムベアリング新品にしたい pic.twitter.com/Ak91Ym6BJ7
— ブラシレス (@brushless023) August 17, 2024
セッティングやテクニック以前に、車両のメンテナンス状態が旋回性能を低下させているケースも見逃せません。
タイヤのプロファイルは旋回性に大きく影響します。ツーリングタイヤのようなラウンド形状のタイヤは穏やかな特性を持つ反面、スーパースポーツが求める俊敏な倒し込みには向いていません。スポーツ走行向けのプロファイルを持つタイヤを選択することで、初期旋回の鋭さが向上する場合があります。
空気圧については、オーナーズマニュアルに記載されたメーカー指定値を基準としてください。不適正な空気圧は操縦安定性に影響を与え、重大事故につながる恐れがあるとマニュアルでも警告されています。サーキット走行時などタイヤメーカーが別途推奨値を示している場合は、温間管理など適切な条件下で自己責任のもと調整することになります。公道走行では指定値の遵守が原則です。
ステムベアリングの段付き摩耗は見落としがちな問題です。ベアリングに打痕や摩耗が発生すると、ハンドルが直進状態でカックンと落ち着いてしまい、スムーズなセルフステアが阻害されます。フロントをジャッキアップしてハンドルを左右に切り、中央付近で引っかかりがないか確認してみてください。
旧モデルではEXUP(排気デバイス)の固着も要注意です。カーボン堆積やサーボモーターの故障で作動しなくなると、低速トルクが極端に低下して立ち上がりでアクセルを開けても車体が起き上がらず、外へ膨らむ現象を引き起こします。
YZF-R1が曲がらないと感じたときの対策

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- サグ出しとプリロード調整の基本
- フォーク突き出し量で旋回性を上げる
- EBMやTCSなど電子制御の見直し
- 逆操舵と荷重移動のコツを掴む
サグ出しとプリロード調整の基本
YZF-R1の旋回性を改善するうえで最も効果的な方法が、サスペンションの適正化です。まず取り組むべきはサグ出しと呼ばれる作業になります。
サグとは、ライダーが乗車した状態でサスペンションがどれだけ沈み込むかを示す数値です。オンロードスポーツモデルの場合、ホイールトラベルの約30%程度が適正とされています。R1のフロントフォークストロークが約120mmと仮定すれば、乗車時に35mmから40mm沈み込む状態が理想的な目安となるでしょう。
サグ出しの手順
空車1Gとして、バイクを直立させて自重のみで沈んだ状態を計測します。次に乗車1Gとして、ライダーが装備を着用して乗車姿勢をとった状態での沈み込み量を測定してください。多くの曲がらないR1は、この乗車時の沈み込みが不足しているケースに該当します。
フロントの沈み込みが足りない場合は、プリロードアジャスターを緩める方向に調整します。リアについては逆に締め込んで車高を維持し、前下がりの姿勢を作ることがポイントです。この調整により、コーナー進入時の回頭性が向上して曲がりやすくなります。
フロントのプリロードを抜くことで1Gでの沈み込み量が増え、ブレーキング時にフォークが縮みやすくなります。リアのプリロードを掛けることで加速時の過度な沈み込みを抑え、スイングアームの適切な垂れ角を確保できるのです。
フォーク突き出し量で旋回性を上げる
続YZF-R1
豆知識。
トップキャップを開けて(浮かせた状態にて)大気解放するだけで、
車高が適正に保たれます。
1G状態で10mm車高があがりました。
単純に車高だけではなく、
フォークの伸びきり時の動きも良くなりロードホールディングも良くなり
おすすめです。※定期的にO/Hはしてくださいませ🙇♂️ pic.twitter.com/zaaHQ3ZLBa
— バイクショップライトニング 鹿児島 (@lightning_jyo) June 11, 2025
よりアグレッシブに旋回性を追求したい場合、トップブリッジに対するフォークの突き出し量を調整する方法があります。標準位置から3mmから5mm突き出すことで、キャスター角が立ってトレール量が減少し、ハンドル操作に対する車体の反応が鋭くなります。
ただし、この調整にはリスクも伴います。やりすぎると直進安定性が損なわれ、高速走行時に不安定になる可能性があるのです。1mm単位での慎重な調整が求められるため、最初は控えめな変更から始めることをお勧めします。
減衰力の調整も重要な要素です。プリロードで車体姿勢を決めた後、動きのスピードを制御するのが減衰力の役割になります。圧側減衰はブレーキングやギャップ通過時の沈む速さを制御し、伸び側減衰はブレーキをリリースする際の戻る速さを制御します。
| 症状 | 推定原因 | 調整方向 |
|---|---|---|
| ブレーキを離すとフロントが浮いて曲がらない | 伸び側減衰が弱すぎる | フロント伸び側を強める |
| コーナー進入でフロントが入っていかない | フロントプリロードが強すぎる | フロントプリロードを緩める |
| ギャップで跳ねて接地感がない | 圧側減衰が強すぎる | 圧側を緩める |
| 立ち上がりで外へ膨らむ | リアが沈みすぎている | リアプリロードを強める |
EBMやTCSなど電子制御の見直し

Ride Style・イメージ
2015年以降のYZF-R1に搭載されているYRC(Yamaha Ride Control)は、ハンドリングに大きく影響する電子制御システムです。設定が適切でないと、これが曲がらない原因になっている可能性も否定できません。
EBM(Engine Brake Management)は、2020年モデル以降に搭載されたエンジンブレーキの効き具合を調整する機能です。設定を強くするとコーナー進入で減速感が増してフロント荷重を作りやすくなりますが、リアが不安定になる場合もあります。逆に弱くすると空走感が強くなり、スムーズにバンクさせやすいと感じるライダーもいます。自身の感覚に合う設定を探ることが重要です。
BC(Brake Control)システムは、IMUからの情報を用いてコーナリング中の制動時に横滑りを抑える目的でブレーキ圧を調整する機能です。BC2モードは介入度が高く設定されています。
BCシステムは適切なライディング操作の代替となるものではありません。状況によっては想定より早く介入することがあり、ライダーが意図したラインと異なる挙動になる可能性もあります。システムの特性を理解したうえで、過信せずに使用することが大切です。
TCS(Traction Control)についても確認しておきましょう。介入度が高すぎると、コーナー出口で駆動力がカットされてリアタイヤを使った旋回が制限される場合があります。タイヤのグリップ性能や路面状況に応じて、介入度を調整することで走りやすさが変わることがあるでしょう。
電子制御の設定変更は、安全な環境で少しずつ試すことをお勧めします。いきなり大きく変更すると、予期しない挙動に対応できない恐れがあります。
逆操舵と荷重移動のコツを掴む

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ハードウェアの調整と並行して、ライダー自身の操作方法を見直すことも不可欠です。R1オーナーから多く寄せられるアドバイスの一つが、逆操舵の活用になります。
左コーナーへ曲がりたい場合、左ハンドルを前方へ押すように入力することで、前輪に発生するジャイロ効果とキャンバースラストが車体を左方向へ倒れ込ませるモーメントを生み出します。高重心かつ太いリアタイヤを履くR1は、単なる体重移動だけではロール軸周りの回転運動が発生しにくいため、ハンドルへの意図的な入力がきっかけとして必要になるのです。
身体の使い方も重要なポイントとなります。コーナーのイン側ステップに体重を乗せると同時に、上半身をイン側のミラーに近づけるように低く前方へ移動させてください。これにより重心位置がイン側前方へシフトし、フロントタイヤへの接地圧を高めながら旋回モーメントを増大させることができます。
ハンドルにしがみついていると、車体が自らバランスを取ろうとするセルフステアを腕で妨げてしまいます。ハンドルへの入力はきっかけのみとし、旋回中は腕の力を抜いてセルフステアを妨げないことが重要です。
ヤマハの特徴である2次旋回を活かすスロットルワークも意識してみてください。コーナー進入で無理に小さく曲がろうとせず、早めに向きを変えてスロットルを開けられる体勢を作ります。パーシャルから少し開けた瞬間のトラクションで、R1はさらにイン側へ向きを変えていく特性を持っています。この感覚を掴むことが、R1を速く走らせるコツと言えるでしょう。
総括:YZF-R1が曲がらないと感じる原因と対策を解説
- 純正サスペンションは硬めの設定で公道には適していないことが多い
- 前高後低のバランスがアンダーステアの主因となっている
- クロスプレーンエンジン搭載車は減速感の違いから荷重移動の工夫が必要
- オフスロットル時の挙動はEBMやスリッパークラッチなど複数要因が関係する
- 年式や仕向地によってモデルコードや特性が異なる点に注意
- タイヤのプロファイル選択は旋回性に大きく影響する
- 空気圧はメーカー指定値を基準とし公道では遵守が原則
- ステムベアリングの段付き摩耗はセルフステアを阻害する
- サグ出しはサスペンション調整の第一歩として必須
- フロントプリロードを抜いてリアを締める方向で調整する
- フォーク突き出し量の増加は慎重に1mm単位で行う
- EBMの設定変更でコーナー進入の感覚を調整できる
- BCシステムは過信せず特性を理解して使用する
- 逆操舵は倒し込みのきっかけとして有効な技術
- 2次旋回を意識したスロットルワークがR1の真髄
