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スズキの名車として今も人気の高いGS400。その派生モデルであるGS400Eも存在しますが、具体的にGS400とGS400Eにはどのような違いがあるのか、気になっている方も多いのではないでしょうか。この記事では、ホイールの違いだけでなく、年式による変遷や性能差、さらにはGS400EとGS400EⅡの違いについても詳しく解説します。
また、輸出モデルであるGS425とGS400の違いは何ですか?という疑問や、そもそもGS400のGSとは何の略称ですか?といった基本的な知識、様々なGS400の呼び方、そして注意すべき全く別の「もう一つのGS400E」の存在、パーツの互換性まで、GS400/Eシリーズを深く知るための情報をまとめました。中古車選びやメンテナンスの参考にしていただけます。
- GS400とGS400E(初代)の具体的な違い(ホイール、外観、年式等)が明確になる
- GS400EとE2の違いやシリーズ全体の年式ごとの変遷を把握できる
- 混同しやすいGS425や全く別モデルのGS400E(GK54A)との違いがわかる
- 中古車選びやパーツ探しに役立つ互換性の有無や注意点を理解できる
基本的なGS400とGS400Eの違い
#衝撃を受けたバイク
16歳の高校生の時に初めて欲しいと思ったバイク(族車)だったなぁ😄⤴️
でもまだこのGS400には乗れてないから、将来的に欲しい!! pic.twitter.com/FJyLXGTjSb— Ichigo@miyagi (@Ichigomiyagi1) January 17, 2025
- スズキ初の400cc4ストGS400とは?
- ホイールで見るGS400とGS400Eの違い
- GS400のGSとは何の略称ですか?
- GS400の様々な呼び方
スズキ初の400cc4ストGS400とは?
GS400は、スズキが1976年に発売した、同社にとって初めてとなる400ccクラスの4ストロークエンジンを搭載したオートバイです。 当時のオートバイ市場では環境規制などの影響もあって、従来の2ストロークエンジンから4ストロークエンジンへの移行が進んでいました。それまでGTシリーズなど高性能な2ストロークモデルを得意としていたスズキでしたが、時代の要求に応える形で4ストロークエンジンの開発に着手します。そして、750ccクラスのGS750と共に、ミドルクラス(中型クラス)向けモデルとしてGS400が登場しました。これは、スズキが400ccクラスの4ストローク市場へ本格的に参入することを示す、重要な一台となりました。
クラス初のDOHC 2バルブエンジン採用
GS400の大きな特徴は、当時の400ccクラスでは唯一となるDOHC(ダブル・オーバー・ヘッド・カムシャフト)方式を採用した、空冷並列2気筒2バルブエンジンです。DOHCは、吸気と排気のバルブをそれぞれ専用のカムシャフトで動かす仕組みで、高回転化に対応しやすい先進的なメカニズムでした。これを採用したことで、競合他社の同クラスモデルに対して技術的な優位性を示しました。初期モデルの最高出力は36ps/8500rpmを発揮し、扱いやすさも備えていました。また、エンジン内部には振動を軽減するためのバランサーも組み込まれており、乗り心地にも配慮されています。
シンプルで飽きのこないデザイン
外観は、奇をてらわないオーソドックスなネイキッドスタイルを採用しています。流れるようなティアドロップ型の燃料タンクや、シャープなデザインのシートカウルなどが特徴です。シンプルながらもバランスの取れたデザインは、発売から年月を経た現在でも多くのファンに支持される理由の一つになっています。
発売当時と現在
スズキにとって初めての試みであった400cc4ストロークモデルでしたが、GS400は市場に受け入れられ、販売は好調でした。扱いやすいエンジン特性とスタイリッシュな外観が、多くのライダー、特に若年層からの人気を集めたと言われます。もちろん、初めての4ストローク開発ということもあり、開発陣は苦労を重ねたようですが、厳しい耐久テストなどをクリアして信頼性を確保しました。 現在では、いわゆる「旧車」として根強い人気があり、特に独特の排気音(吸い込み音)などが注目されることもあります。ただし、古いバイクであるため、維持には専門的な知識やメンテナンスが必要になる点に注意しましょう。
ホイールで見るGS400とGS400Eの違い

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GS400とその派生モデルであるGS400Eを見分ける上で、最も分かりやすいポイントは装着されているホイールの違いです。具体的には、GS400がスポークホイールを採用しているのに対し、GS400Eではキャストホイールが採用されました。
なぜホイールが違うのか?
GS400Eは、1978年にGS400のマイナーチェンジ版として登場したモデルです。「E」は、当時のスズキ車においてキャストホイール装着モデルを示す記号として使われることが多くありました。当時、アルミ製のキャストホイールは比較的新しい技術であり、スポーティで先進的なイメージがありました。そのため、GS400にキャストホイールを採用したGS400Eをラインナップに加えることで、よりユーザーの選択肢を広げ、商品としての魅力を高める狙いがあったと考えられます。
ホイールによる見た目と特徴の違い
それぞれのホイールには以下のような特徴があります。
モデル | ホイールタイプ | 特徴 |
---|---|---|
GS400 (初期) | スポークホイール | ・ワイヤーが放射状に伸びる伝統的な形式 ・クラシカルで軽快な外観 ・衝撃吸収性に優れるとされる ・定期的なスポークの張り調整や清掃に手間がかかる場合がある |
GS400E (初期) | キャストホイール |
・アルミ合金製の一体成型(GS400Eは特徴的な星形デザイン) ・スポーティで足元が引き締まった印象 |
GS400Eに採用された星形のキャストホイールは、デザイン面でのインパクトも大きく、当時のカスタムとしても人気がありました。
性能や人気への影響
スズキによると、GS400Eのキャストホイールは、スポークホイールモデルと同等の重量に抑えられていたようです。そのため、ホイールの違いが走行性能に与える大きな差はなかったと言えます。 どちらのスタイルも魅力的ですが、現在の中古市場においては、よりクラシカルな雰囲気を好む層からスポークホイールのGS400の方がやや人気が高い傾向が見られます。もちろん、発売当時は先進的なキャストホイールを備えたGS400Eも高い人気を誇りました。 中古車を選ぶ際には、このホイールの違いが年式やモデルを判断する上での重要な手がかりとなります。
GS400のGSとは何の略称ですか?
あさんぽ☀️ pic.twitter.com/WIVAbqXxiQ
— カズ (@kz_gs400) April 18, 2025
GS400の名称に含まれる「GS」とは、「Grand Sports(グランド・スポーツ)」という言葉の略称です。 スズキはこの「GS」という名を、同社のスポーツバイクラインナップにおける重要なモデル、特にフラッグシップ(シリーズの代表や最上位に位置づけられる機種)であることを示す称号として用いました。
1976年にGS400が登場した背景には、当時のオートバイ市場における4ストロークエンジンへの移行の流れがあります。それまで2ストロークエンジンを得意としてきたスズキが、満を持して投入した4ストロークモデルがGSシリーズでした。そのため、この新しいシリーズには、高性能で本格的なスポーツバイクであるというイメージを込める必要があったと考えられます。
「Grand(グランド)」は「壮大な」「素晴らしい」、「Sports(スポーツ)」は文字通り「スポーツ」を意味し、これらを組み合わせることで、GS400が単なる移動手段ではなく、走りを楽しむための優れた性能を持つオートバイであることを表現しています。
実際、GS400と同時に発表された大型モデルGS750をはじめ、その後登場するGSXシリーズなど、スズキの高性能スポーツバイクの系譜において「GS」の名は重要な意味を持ち続けてきました。したがって、GS400の「GS」は、スズキの4ストロークスポーツバイクの歴史の幕開けを飾る、特別な意味を持つ略称と言えるでしょう。
GS400の様々な呼び方

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GS400には、正式なモデル名以外にも、オーナーやファンの間、あるいは文脈によっていくつかの呼び方が存在します。ただし、全国的に広く認知された公式な愛称(ニックネーム)というものは特に定まっていないようです。
最もシンプルで一般的なのは、単に「GS(ジーエス)」と呼ぶ方法です。会話の流れや状況でどのバイクを指しているか明らかな場合は、この呼び方がよく使われます。ただし、スズキにはGS750や後のGSXシリーズなど、他にも「GS」の名を持つモデルが多数存在するため、区別が必要な場面もあります。
また、排気量から「ヨンヒャク」と呼ばれることもあります。これも他の400ccクラスのバイクと区別するために、「スズキのヨンヒャク」や、車種名を付けて「GSのヨンヒャク」といった言い方をすることがあります。
さらに、GS400は年式や仕様によっていくつかのバリエーションがあるため、それらを区別するために特定の呼び方が用いられることも少なくありません。例えば、以下のように呼ばれることがあります。
- ・最初のスポークホイールモデルを指して「初期型(のGS)」
- ・キャストホイールが装着されたモデルを「GS-E(ジーエス イー)」または単に「E(イー)」
- ・GS400EのマイナーチェンジモデルであるGS400E2を「E2(イー・ツー)」
加えて、GS400の特徴の一つとして、特定の条件下で発生する独特の排気音(いわゆる「吸い込み音」)が知られています。そのため、このサウンド面に注目して「吸い込みのGS」といった表現が使われることもあります。ただし、これはバイクの状態やマフラーなどのカスタムに大きく左右されるため、全てのGS400に当てはまる呼び方ではありません。
このように、GS400には様々な呼び方が存在しますが、それは長年にわたる人気や、モデルの持つ特徴、そしてファンコミュニティの中での使われ方などが背景にあると言えるでしょう。
GS400とGS400Eの違いと派生モデル

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- GS400/Eシリーズの年式と変遷
- GS400EとGS400EⅡの違いは?
- GS425とGS400の違いは何ですか?
- 全く違う?もう一つのGS400Eとは
- キャブで見る国内と逆車の違い?
- GS400とGS400Eのパーツ互換性
GS400/Eシリーズの年式と変遷
スズキGS400およびその派生モデルであるGS400Eシリーズは、1976年の初代モデル登場から、後継機種のGSX400Eが登場する1980年までの約4年間にわたり生産されました。この期間中、市場のニーズや技術の進化に合わせて、いくつかのマイナーチェンジが実施されています。
ここでは、主なモデルの登場年と特徴、フレーム打刻ナンバーの開始番号を時系列で見ていきましょう。フレーム打刻ナンバーは、車体のステアリングヘッド部分(ハンドルの付け根あたり)に刻印されており、モデルや年式を特定する上で重要な情報となります。
1976年:GS400 登場 (GS400-10001~)
記念すべき初代モデルです。スズキ初の400ccクラス4ストロークエンジン搭載車であり、クラス唯一のDOHC 2バルブエンジンを採用したことが大きな特徴でした。ホイールはワイヤースポークタイプを装着しています。
1978年:GS400-2 (GS400-42205~) および GS400E (GS400-52482~) 登場
この年には、主に2つの動きがありました。一つはGS400のマイナーチェンジ版である「GS400-2」の登場です。スポークホイールは継続されましたが、細部の仕様変更が行われています。 そしてもう一つが、GS400シリーズの人気をさらに高めることになった「GS400E」の登場です。最大の特徴は、当時のカスタムパーツとしても人気があった星形のアルミキャストホイールを標準装備した点にあります。これにより、よりスポーティな外観となりました。燃料タンクのデザインも「Eライン」と呼ばれるシンプルなラインに変更されています。
1979年:GS400E2 (GS400-63122~) 登場
GS400Eからさらに改良が加えられた「GS400E2」が登場します。燃料タンクのデザインが、ラインの端がカールした「E2ライン」と呼ばれる、より装飾的なものに変更されました。また、キャブレターが従来の「押しキャブ」から「引きキャブ」と呼ばれるタイプに変更された点や、フレームの一部に補強が加えられた点などが主な変更点です。
1980年:GS400E3 (GS400-71830~) 登場と生産終了
GS400シリーズの最終モデルとされる「GS400E3」が登場します。E2からの細かな改良が主であったようです。同年には、4バルブエンジンを搭載した後継機種「GSX400E」が登場したため、GS400シリーズ(初代)の生産はこの年で終了となりました。
シリーズの変遷まとめ
以下に簡単な年表をまとめます。中古車購入などの際の参考にしてください。
登場年 | モデル名 | フレーム打刻ナンバー | 主な特徴 |
---|---|---|---|
1976年 | GS400 | GS400-10001~ | ・初代 ・DOHC 2バルブ ・スポークホイール |
1978年 | GS400-2 | GS400-42205~ | ・スポークホイール継続 ・細部変更 |
1978年 | GS400E | GS400-52482~ | ・星形キャストホイール採用 ・Eライン |
1979年 | GS400E2 | GS400-63122~ | ・E2ライン ・引きキャブ採用 ・フレーム補強等 |
1980年 | GS400E3 | GS400-71830~ | ・E2からの細部変更 |
(参考) | GS400L | GS400-62882~ | ・アメリカンタイプ ・(E/E2系エンジン) |
(注意) | GS400E | GK54A (1989年~) | ・全く別のモデル ・(GS500Eベース) |
※GS400Lはアメリカンスタイルの派生モデルです。 ※1989年以降に登場したGS400E(型式GK54A)は、ここで紹介したGS400/Eシリーズとはエンジンや車体構成が全く異なる、海外向けGS500Eをベースとした別のバイクですので、混同しないよう注意が必要です。
GS400EとGS400EⅡの違いは?
昔、バブに乗りそして、GSに乗った😊
吸いこんで、遊んだ車体✨
やっぱり、店に出さずに自分で抜くあんこは良かった#suzuki#GS400E#ポンカン旧道 pic.twitter.com/yudCcAiz7F— ポンカン🍊旧道 (@tEwBns4IkuOkE5s) September 5, 2024
GS400EⅡ(一般的にE2と表記されます)は、1979年に登場したGS400Eのマイナーチェンジモデルです。基本的なエンジンや車体の構成は共通ですが、いくつかの点で違いが見られます。中古車を見分ける際や、パーツを探す際に知っておくと役立つ主な違いを解説します。
1. 燃料タンクのデザイン(カラーリングライン)
最も分かりやすい外観上の違いは、燃料タンクのカラーリングデザインです。
- ・GS400E: タンクの縁に沿って比較的シンプルな2本の線が引かれた「Eライン」と呼ばれるデザインです。
- ・GS400E2: ラインの端(タンク後方下部あたり)がくるっとカールした、より装飾的な「E2ライン」と呼ばれるデザインに変更されました。このE2ラインは人気が高く、後のカスタムペイントで再現されることも多い定番のデザインとなっています。
2. キャブレターの形式
エンジンに燃料を供給するキャブレターの形式も変更されています。
- ・GS400E: チョーク(エンジン始動時に混合気を濃くする装置)のレバーをキャブレター本体で直接押し下げるタイプの「押しキャブ」が採用されています。
- ・GS400E2: チョークレバーがワイヤー式になり、手元(またはキャブレター付近の別の場所)でレバーを引いて操作するタイプの「引きキャブ」に変更されました。 この変更により、チョーク操作の方法が異なるほか、キャブレター内部の部品やセッティングも変わっています。そのため、キャブレター関連の部品(インシュレーターやエアクリーナーボックスなども含む)には、EとE2で互換性がないものが多いので注意しましょう。
3. サイドカバーのエンブレム
車体側面にあるサイドカバーのモデル名表示にも違いがあります。
- ・GS400E: モデル名表記はステッカー(シール)でした。
- ・GS400E2: 立体的なエンブレムに変更され、質感が向上しています。
4. フレームの一部補強など
目に見えない部分ですが、E2ではフレームの一部に補強が加えられるなどの改良も施されたと言われています。これは走行安定性などの向上を目的としたものと考えられます。
まとめ
GS400EとE2は、ぱっと見は似ていますが、タンクデザインやキャブレター形式、エンブレムなどに明確な違いがあります。特にキャブレターの違いは、メンテナンスやカスタムの際に重要となるポイントです。どちらのモデルもGS400シリーズの人気モデルですが、これらの違いを知っておくと、より深く車両を理解する助けになるでしょう。
GS425とGS400の違いは何ですか?

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GS425は、基本的にGS400のエンジン排気量を少しだけ大きくした、海外輸出向けのモデルです。見た目はGS400とほとんど変わりませんが、エンジン性能や日本国内で運転する際に必要な免許区分が異なります。
なぜ排気量が違うのか?
GS400は主に日本国内市場をターゲットにしており、当時の日本の免許制度における中型自動二輪免許(400cc以下)に合わせて398ccという排気量で設計されました。一方、GS425が輸出された欧米などの海外市場では、こうした排気量区分がない国が多くありました。 当時のライバルメーカーも400ccクラスのバイクの排気量を少し上げた輸出モデル(例:ホンダ CB400Tに対するCB433など)を投入しており、スズキもこれらに対抗するために、GS400のエンジンのボア(シリンダーの内径)を2mm広げて排気量を423ccにアップ。これにより、若干のパワーアップを図ったGS425を輸出専用モデルとしてラインナップしたのです。
具体的な違い
GS400とGS425の主な違いをまとめます。
項目 | GS400 (国内仕様参考) | GS425 (輸出仕様参考) | 主な違い |
---|---|---|---|
販売地域 | 主に日本国内 | 主に海外(欧米など) | |
排気量 | 398cc | 423cc | ・GS425が大きい (ボアアップ) |
最高出力 | 37ps / 8,500rpm (※1) | 40ps / 8,500rpm | ・GS425が若干高い |
最大トルク | 2.8kgf / 6,600rpm (※1) | 3.2kgf / 7,000rpm | ・GS425が若干高い |
外観 | サイドカバー「GS400」 | サイドカバー「GS425」 | ・表記以外はほぼ同じ |
メーター | 国内仕様に準ずる | マイル表示 or 高スケール | |
免許区分(日本) | 中型自動二輪 | 大型自動二輪 | ・GS425は大型免許が必要 |
(※1: GS400のスペックは複数存在するため、ここでは情報源の一つであるGS425解説記事で比較対象とされている数値を参考に記載しています。)
表の通り、GS425はGS400と比較して最高出力・最大トルクがわずかに向上しています。外観上の違いはサイドカバーのモデル名の表記程度で、その他の車体構成部品(フレーム、タンク、シート、足回りなど)は基本的にGS400と共通です。ただし、輸出モデルのためスピードメーターがマイル表示であったり、km/h表示でも国内仕様よりスケールが大きいものが装着されています。
日本国内でのGS425
元々は輸出専用でしたが、後に「逆輸入車」として日本国内でも流通するようになりました。排気量が400ccを超えているため、日本で運転するには大型自動二輪免許が必要になります。 GS400とほとんど同じ見た目でありながら、わずかに排気量が大きく、希少性もあることから、一部の旧車ファンの間で人気があり、中古車市場では高値で取引されることもあるようです。「他人とは少し違うGSに乗りたい」という需要に応えるモデルと言えるかもしれません。
全く違う?もう一つのGS400Eとは
俺にとってのgs400eとは
GK54Aです。 pic.twitter.com/vLzZg6X6ip— 初期値🥷 (@KDX_offroad) September 6, 2016
「GS400E」という名前を聞くと、多くの方は1978年に登場した初代GS400のキャストホイール装着モデルを思い浮かべるでしょう。しかし、実はそれとは別に、1989年(国内発売は1991年という資料もあります)に登場した、全く異なる「GS400E」(型式名:GK54A)が存在します。この二つの「GS400E」は、名前こそ同じですが、中身は全くの別物と言って良いほど違うバイクです。
なぜ同名の別モデルが存在するのか?
この「もう一つのGS400E(GK54A)」は、当時スズキが海外向けに販売していた「GS500E」というモデルがベースになっています。GS500Eは、シンプルで扱いやすく、価格も手頃なことから、主にヨーロッパ市場などで日常の足(シティコミューター)として長年人気を保ったモデルでした。 スズキは、このGS500Eのエンジン排気量を日本の免許制度(中型自動二輪免許)に合わせて399ccに縮小し、国内向けのベーシックなネイキッドモデルとして発売しました。それが、1989年登場のGS400E(GK54A)なのです。つまり、開発経緯やベースモデルが初代GS400/Eシリーズとは全く異なる成り立ちを持っています。
初代GS400Eとの主な違い
では、具体的に初代GS400E(1978年~)とGK54AのGS400E(1989年~)は何が違うのでしょうか。
- ・エンジン: どちらも空冷の並列2気筒エンジンですが、内部構造は異なります。初代がDOHC 2バルブであったのに対し、GK54Aはよりシンプルな構造の2バルブエンジンです。(※情報源によってはGK54AもDOHCと記載される場合もありますが、初代のような高性能を追求した設計ではありません)。最高出力はGK54Aが39ps/9500rpmと、初代の後期型と同等の数値ですが、発生回転数が高くなっています。エンジンのフィーリングやサウンドも、初代とはかなり異なると言われます。
- ・フレーム・足回り: 初代が丸パイプのダブルクレードルフレームにリアツインショックという構成だったのに対し、GK54Aは角断面パイプのダブルクレードルフレームに、リアはモノショック式サスペンション(リンク式)を採用しています。
- ・デザイン: 初代が70年代らしいクラシカルなネイキッドスタイルだったのに対し、GK54Aはタンクからシートカウルにかけて一体感のある、当時のネイキッドとしてはモダンなヨーロピアンスタイルのデザインを採用しています。
商業的な結果と現在の状況
GK54AのGS400Eは、ベーシックな性能と抑えられた価格設定でしたが、発売された時期が悪かったと言えます。当時は高性能な4気筒ネイキッド(カワサキ ゼファー400やスズキ バンディット400など)が人気を集めており、それらと比較されるとスペックやスタイリングが見劣りしてしまい、残念ながら人気モデルとはなりませんでした。結果的に「不人気車」のレッテルを貼られ、国内での販売期間は短く終わってしまいました。 そのため、現在では中古車市場でこのGK54AのGS400Eを見かけることは非常に稀です。
最も重要な注意点:混同しないこと!
このように、同じ「GS400E」という名前を持っていても、1970年代末のモデルと1990年前後のモデル(GK54A)は全くの別物です。中古車を探す際や、特に部品を探す際には、どちらのGS400Eなのかを年式や型式(GK54Aなど)、あるいは写真でよく確認し、絶対に混同しないように注意が必要です。パーツの互換性はほとんどないと考えてください。
キャブで見る国内と逆車の違い?

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GS400シリーズの中古車を見ていると、「国内物」や「逆車(逆輸入車、輸出仕様)」といった言葉を目にすることがあります。これらは元々販売されていた地域が異なる車両ですが、キャブレターの仕様によってもある程度の違いが見られる場合があります。
「引きキャブ」は国内仕様の特徴?
GS400シリーズのキャブレターには、大きく分けてチョークレバーの操作方法が異なる「押しキャブ」と「引きキャブ」の2種類が存在します。
- ・押しキャブ: キャブレター本体にあるチョークレバーを直接押し下げて操作するタイプです。GS400の初期型からGS400Eまでのモデルに採用されていました。逆輸入車(特に初期から中期の輸出仕様)も、この押しキャブタイプであることが多いようです。
- ・引きキャブ: チョークレバーがワイヤーを介しており、手元などでレバーを引いて操作するタイプです。これはGS400E2およびE3という、国内仕様の後期モデルで採用された形式とされています。 したがって、もし車両に「引きキャブ」が装着されていれば、それは国内の後期モデル(またはそのエンジンやキャブが移植された車両)である可能性が高いと推測できます。ただし、逆輸入車であっても後から国内仕様の引きキャブに交換されている可能性もゼロではありません。
押しキャブの中にも違いが?
押しキャブの中でも、細かな違いでモデルを推測できる場合があります。例えば、チョークレバー先端に黒いゴム(樹脂)のカバーが付いているものは国内の初期型GS400、カバーがなく金属レバーのみのものは国内GS400-2やGS400Eの特徴とされています。 また、外観が同じ押しキャブであっても、輸出先の排出ガス規制や馬力規制などに対応するため、内部のジェット類の番手(燃料や空気の通路の穴の大きさを示す番号)などのセッティングが国内仕様とは異なっている場合があります。さらに、一部の逆輸入車では、ダイヤフラム(負圧に応じてピストンを上下させるゴム部品)やジェットニードル(ピストンと共に上下し燃料流量を調整する針)の形状、固定方法などが国内仕様と異なる特殊なタイプが存在したという情報もあります。
キャブだけで判断するのは難しい
このように、キャブレターの形式や特徴から国内仕様か逆輸入車か、あるいは年式などをある程度推測することは可能です。しかし、中古車の場合はキャブレター自体が交換されている可能性も十分に考えられます。そのため、キャブレターの仕様だけで車両の出自を100%断定するのは難しいと言えます。 より確実に国内仕様か逆輸入車かを見分けるには、やはりフレーム番号(国内仕様は基本的にGS400-の後に5桁の数字、6桁やアルファベットが入る場合は逆輸入車の可能性が高い)を確認するのが最も確実です。加えて、スピードメーターの表示(マイル表示や200km/h超のスケールは逆輸入車の特徴)、ハンドルロックの位置(フレーム側についているものは逆輸入車の可能性あり)なども判断材料になります。 キャブレターはあくまで判断材料の一つとして捉え、他の部分と合わせて総合的に確認することが重要です。
GS400とGS400Eのパーツ互換性
#gs400 #セパハン pic.twitter.com/KHfGg96WtW
— Remus gs400 (@TeddyRem) May 24, 2024
GS400と、そのマイナーチェンジモデルであるGS400E(1978年登場の初代)は、基本的な車体構成やエンジン設計が共通しているため、多くの部品で互換性があります。しかし、全ての部品がそのまま流用できるわけではなく、特に仕様変更があった箇所や年式による違いには注意が必要です。
互換性が高い主な部品
一般的に、以下の部品についてはGS400とGS400Eの間で互換性が高いと考えられます。
- ・エンジン: シリンダー、シリンダーヘッド、ピストン、クランクシャフトといったエンジンの基本構成部品は共通性が高いです。(ただし、年式によってカムシャフトの種類などが異なる場合があります。)
- ・フレーム: 基本的な骨格は共通ですが、GS400E2以降では一部に補強が加えられています。
- ・サスペンション: フロントフォークやリアショックアブソーバーの基本的な取り付け部分は共通です。
- ・燃料タンク・シート: 取り付け自体は可能ですが、デザインやカラーリング、E/E2でのラインの違いがあります。シートも同様に取り付けはできますが、形状や表皮デザインが異なります。
- ・ステップ周り: ステップやペダル類なども流用可能な場合が多いです。
互換性がない、または注意が必要な主な部品
一方で、以下の部品については互換性がないか、流用には注意が必要です。
- ・ホイール関連: GS400のスポークホイールとGS400Eのキャストホイールでは、ホイール本体はもちろん、アクスルシャフトの径や長さ、ブレーキディスクの取り付け方法、スピードメーターギアなどが異なる可能性があります。安易な流用はできません。
- ・キャブレター関連: GS400/E(押しキャブ)とGS400E2/E3(引きキャブ)では、キャブレター本体だけでなく、インシュレーター(エンジンとキャブを繋ぐゴム部品)、エアクリーナーボックス、スロットルワイヤー、チョークワイヤーなども含めて互換性がないと考えた方が良いでしょう。同じ押しキャブでも年式によって内部部品が異なる場合もあります。
- ・電装系: 年式や国内/逆車の違いにより、ポイント点火の部品(点火時期を制御する部品)、レギュレーター(電圧を制御する部品)、メインハーネス(配線)などが異なる場合があります。
- ・外装: サイドカバーは、GS400E2以降でエンブレムが採用されるなど仕様が異なります。テールカウルの形状も微妙に違う場合があります。
- ・メーター周り: メーターカバーのデザイン(メッキ部分の有無や位置)が年式によって異なります。
互換性を確認するには?
部品の互換性を最も確実に確認する方法は、スズキが発行している「パーツリスト(部品カタログ)」を参照することです。パーツリストには、部品ごとに部品番号が記載されており、どのモデル(型式)に適合するかの情報が含まれています。部品番号が完全に一致すれば、基本的には互換性があると判断できます。
部品流用・購入時の注意点
GS400/Eシリーズは旧車であり、長年の間に部品が交換されている可能性があります。見た目はGS400Eでも、エンジンはGS400のものだったり、その逆(いわゆるニコイチ)ということも珍しくありません。 そのため、部品を購入する際は、ご自身の車両の年式や型式、現在の状態をよく確認することが非常に重要です。可能であれば、購入したい部品と現在車両についている部品を比較したり、旧車に詳しい専門店に相談したりすることをおすすめします。適合しない部品を無理に取り付けようとすると、思わぬ不具合や故障の原因となる可能性があります。 また、GS400L(アメリカンタイプ)やGS425(輸出用排気量アップ版)、そして全く別物のGS400E(GK54A)との部品互換性はさらに限定的になりますので、これらのモデルとの部品流用はより慎重な判断が必要です。
総括:GS400とGS400Eの違いを徹底解説!中古購入時の注意点
この記事をまとめると、
- GS400はスズキ初の400cc4ストDOHC2バルブ車である
- GS400とGS400E(初代)の主な外観差はホイール(スポーク対キャスト)である
- GS400Eの「E」はキャストホイール仕様を意味することが多い
- GS400とGS400E(初代)の基本性能に大きな差はないとされる
- GS400E(1978)からGS400E2(1979)への主な変更点はタンクラインやキャブ形式である
- GS400E2/E3では操作方法が異なる「引きキャブ」が採用された(国内仕様後期)
- GS400E2からはサイドカバーがステッカーからエンブレムに変更された
- 「GS」は高性能スポーツを示す「Grand Sports」の略称である
- 一般的な呼び方は「GS」、年式や仕様で「初期型」「E」「E2」などと区別される
- GS425はGS400ベースの排気量アップ(423cc)輸出仕様である
- GS425の運転には大型二輪免許が必要となる
- 1989年以降のGS400E(GK54A)は初代とは全く別のバイクである
- GK54AはGS500Eベースで角フレーム、モノショックを採用する
- 初代GS400/EとGK54Aにパーツ互換性はほとんどない
- GS400と初代GS400E間でもホイール周りや後期キャブ関連の互換性には注意が必要である