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カワサキのGPZ1100について調べていると、なぜか不人気という言葉がよく出てきませんか。確かに街中で見かけることは少なく、バイク雑誌でも取り上げられる機会はあまりありません。しかし、空冷GPz1100(小文字のz)は1980年代前半の量産1100ccクラスで最速タイムを記録し、一方、水冷GPZ1100(大文字のZ)は中古市場では驚くほど手頃な価格で販売されているモデルでもあります。
カワサキでは空冷エンジン搭載モデルは小文字の「GPz」、水冷エンジン搭載モデルは大文字の「GPZ」で表記されており、これらは全く異なる性格を持つバイクです。空冷GPz1100(1981-1985年)と水冷GPZ1100(1995-1998年、ABS仕様は1996-1997年)では、それぞれ異なる魅力を持っています。カスタムベースとしてニンジャ仕様に改造する愛好家もいれば、オイル量やマフラー交換などの基本的なメンテナンスで大幅な性能向上を実現する人もいます。不人気と言われる一方で、知る人ぞ知る隠れた名車として評価されているのも事実なのです。
- GPZ1100が不人気と言われる具体的な理由と背景
- 空冷と水冷モデルの違いと中古市場での価格相場
- カスタムやニンジャ仕様改造の可能性と注意点
- オイル量調整やマフラー交換による性能向上の効果
GPZ1100が不人気と言われる理由

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- 空冷と水冷モデルの混在による認知度の低さ
- 水冷モデルのカウルデザインが評価されなかった理由
- 重量とポジションが大柄すぎる問題
- ZZR1100の影に隠れた存在
- 市場での注目度が低かった背景
空冷と水冷モデルの混在による認知度の低さ
GPZ1100の不人気要因として、まず挙げられるのが空冷GPz1100(1981-1985年)と水冷GPZ1100(1995-1998年、ABS仕様は1996-1997年)という全く異なるバイクが同じ名前で存在することです。カワサキの表記規則では空冷は小文字の「z」、水冷は大文字の「Z」で区別されますが、一般的にはこの区別があまり知られていません。
空冷GPz1100は5年間の生産期間でB1型(1981年)、B2型(1982年)、A1型(1983年)、A2型(1984-1985年)という複数のバリエーションが存在しました。最高出力120ps(クランク公称値、実測では約110-115ps)、0-400m加速11秒前半という性能で1980年代前半の量産1100ccクラスにおいて最速タイムを記録していました。
一方、水冷GPZ1100はE型(1995-1998年)と欧州仕様F型(ABS付き1996-1997年)に分かれ、ZZR1100系の1052ccエンジンを搭載したツアラーとして開発されました。国内仕様は97ps、海外仕様は123hpという出力設定で、明らかに性格の異なるバイクでした。この二つのモデルが混在することで、どちらについて語っているのか曖昧になりやすく、結果として両方とも注目度が下がってしまったのです。
水冷モデルのカウルデザインが評価されなかった理由
GPz1100。水冷モデル。でかくて重いが走り出せばスイスイ。純正マフラーだという爆音の二本出し。NS-1のような乗り心地。バイパスで2○○km出た。FCR33π pic.twitter.com/1671FKUObL
— なはなん (@nana_hann) January 21, 2014
水冷GPZ1100(ZX1100E型)のフルカウルデザインについては、当時から地味で特徴に欠けるという評価が多く聞かれました。ダブルクレードル鋼管フレームにフルカウルを装着した仕様でしたが、同時期のスーパースポーツと比較すると迫力不足という印象を与えていました。
1995年という時代は国内仕様にフルカウルが本格的に認可された時期で、デザイン的に洗練されたカウルを作るノウハウが発展途上だった可能性があります。欧州仕様F型(1996-1997年)ではABSが装備されるなど機能面での進化はありましたが、基本的なデザインコンセプトに大きな変化はありませんでした。ABS装備は安全性向上には寄与しましたが、外観評価には直結しなかったといえます。
また、GPZ900Rニンジャが1984年にデビューし、11年にわたって洗練されたデザインを確立していたことも、水冷GPZ1100のカウルが見劣りして見える要因となりました。先行して完成度を高めたニンジャと比較されることで、相対的に評価が下がってしまったのです。
重量とポジションが大柄すぎる問題

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空冷GPz1100の乾燥重量は244-250kg(モデル差あり)、水冷GPZ1100は242kgで、いずれも当時としては重量級の部類に入ります。実際のユーザーレビューを見ると「とにかく重い」という声が圧倒的に多く、取り回しの大変さを訴える人が目立ちます。特に水冷モデルについては、重量に関する不満を表明するオーナーが多数存在しています。
ポジションについても大柄なライダー向けの設計となっており、標準的な日本人の体格には合わないという指摘があります。ハンドルは遠めで、シートは高め、チェンジレバーも遠めという設定で、身長185cmのライダーでも「気持ち遠め」と感じるほどでした。
このような車体特性により、体格の小さなライダーや非力な人には扱いが困難なバイクという印象が定着してしまいました。結果として、購入を検討する層が限定され、市場での人気獲得に至らなかったのです。
ZZR1100の影に隠れた存在
海王丸パーク!
めちゃ天気がいい😆👍#gpz1100 #zzr1100 pic.twitter.com/2cVUWBRCSM— 深ちゃん (@zx14fukaju) May 23, 2021
水冷GPZ1100がZZR1100と同じ1052ccエンジンをベースにしていることは、皮肉にもGPZ1100の不人気要因となりました。ZZR1100が世界最速バイクとして注目を集める中、GPZ1100はラムエアシステムを持たない仕様という位置づけで見られることが多かったのです。
キャブレターもZZR1100がダウンドラフト仕様だったのに対し、GPZ1100はホリゾンタル仕様のφ36mmという違いがありました。同じエンジンベースでありながら、明らかに控えめな設定となっていたため、中途半端な立ち位置として認識されてしまいました。
価格的にはGPZ1100の方が安価でしたが、性能重視のライダーからは「それならZZR1100を選ぶ」という判断をされることが多く、差別化に苦労していました。
市場での注目度が低かった背景

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GPZ1100の不人気には、市場全体での注目度の低さも関係していると考えられます。1990年代中期という時代背景を考えると、レーサーレプリカブームが一段落し、ツアラー需要が高まっていた時期でした。しかし、GPZ1100はその中でも地味な存在として扱われがちでした。
バイク雑誌での取り上げられ方も控えめで、特集記事が組まれることも少なかったようです。カワサキ自体もZZR1100やGPZ900Rに力を入れていた印象があり、GPZ1100は社内でも優先度の低い存在だった可能性があります。
ただし、これらの状況は販売台数や当時の媒体記事を詳細に調査しないと確定的な判断は困難です。不人気といわれる理由について、より具体的なデータに基づいた分析が必要でしょう。
GPZ1100の不人気を覆すポテンシャル

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- 空冷GPz1100のクラス最速性能
- 中古市場での圧倒的なコストパフォーマンス
- ニンジャ仕様カスタムの可能性
- オイル量とマフラー交換での性能向上
- ツーリング性能では他車を圧倒する快適性
- 玄人好みの隠れた名車としての価値
空冷GPz1100のクラス最速性能
空冷GPz1100のエンジンは、カワサキZ系エンジンの集大成といえる存在でした。最高出力120ps(クランク公称値)、最大トルク10.2kg-mという数値は、当時の空冷エンジンとしては驚異的なものでした。Cycle World誌の実測では0-400m加速11.18秒を記録し、1981-82年当時の量産1100ccクラスで最速タイムを達成、「クラス最速」と評されました。
Z1から始まったカワサキの空冷4気筒エンジンの最終形態として、歴代Zのノウハウがすべて詰め込まれています。バルブリフトの拡大、バスタブ型燃焼室の採用、アンダーバケットシムの使用など、当時の最新技術が惜しみなく投入されました。
B1型(1981年)ではカワサキ初のフューエルインジェクション(DFI)を搭載し、B2型(1982年)ではクローズループ デジタル フューエルインジェクションに進化しました。A1型(1983年)以降はフルカウル装着により、GPZ900Rニンジャのデザインベースとなる流麗なスタイリングを確立しています。
中古市場での圧倒的なコストパフォーマンス
今乗ってる'99のGPZ1100は'04に42万円で買った
6000km走ってる中古で、devil管の入ったその他ノーマル状態だった
それがこんな事になってしまって
miniもどうなることか pic.twitter.com/vdKI6KzJEf
— かえる@ムロイハウスクリーニング愛知支社長 (@frog821221) November 19, 2019
水冷GPZ1100の最大の魅力は、中古市場での価格の安さです。2025年7月時点のGooBike等の国内中古車サイト調べでは、45万円台の個体が最安で、状態の良い個体でも130万円程度という範囲で推移しており、同世代の他のリッタークラスと比較すると格段に手頃な価格設定となっています。
ZZR1100やZRX1100と同系の1052ccエンジンを搭載しながら、この価格で購入できるのは大きなメリットです。部品の共通性も高く、エンジン関連のメンテナンス部品はZZR系やZRX系から流用可能なものが多数あります。
21リットルの大容量タンク(空冷モデル、*一部北米仕様は20L*)、22リットル(水冷モデル)による長い航続距離も魅力の一つです。平均燃費18km/L程度を前提とすると、400km近い航続距離を実現できます。優秀な風防効果、充実した積載性など、ツーリングバイクとしての基本性能は非常に高レベルです。
ニンジャ仕様カスタムの可能性

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水冷GPZ1100の楽しみ方として、ニンジャ仕様へのカスタムという選択肢があります。特にGPZ900Rのアッパーカウルを装着するカスタムは、実際に専門ショップで手がけられており、高い完成度を実現しています。
AutoMagicなどの老舗カスタムショップでは、GPZ1100をベースとした本格的なニンジャ仕様カスタムを手がけており、外観上の違和感を完全に排除した仕上がりを提供しています。フレームやエンジンはGPZ1100のまま、外観だけをニンジャ風にアレンジできるのです。
ただし、こうしたカスタムには相応の費用と技術が必要です。フィッティングの調整や電装系の変更など、専門知識が求められる作業も多く含まれます。完成度を求めるなら、実績のあるショップに依頼することをおすすめします。
オイル量とマフラー交換での性能向上
#GPZ1100
重いってイメージの1100…確かに。
カタログの乾燥重量ではZRX1100より20㎏、ZZR-Dからは10㎏。
さらにノーマルの242㎏からABSは約10㎏プラス。
マフラーとホイールがとにかく重いです。
ですが自分には乗りやすくてかなりお気に入りのバイクです。 pic.twitter.com/5PHwef3OAY— Cika (@Cika17656954) October 22, 2023
GPZ1100の性能を向上させる基本的な方法として、オイル量の適正管理とマフラー交換があります。エンジンオイルの全容量は3.7リットルで、オイル交換時は3.2リットル、フィルター交換時は3.5リットルという設定になっています。推奨粘度SAE10W-40を使用し、適正な量を維持することでエンジンの潜在能力を引き出せます。
マフラー交換による効果は特に顕著で、チタン製のフルエキゾーストシステムに変更することで、重量軽減と排気効率の向上を同時に実現できます。VANCE&HEINSなどの社外マフラーを装着することで、カワサキらしい迫力のあるサウンドも楽しめます。
FCRキャブレターへの変更も人気のカスタムです。スロットル開度に対するレスポンスが向上し、より機敏な加速特性を得ることができます。ただし、キャブレターのセッティングには専門知識が必要で、乗り方に合わせた細かな調整が求められます。
ツーリング性能では他車を圧倒する快適性

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水冷GPZ1100の真価は長距離ツーリングで発揮されます。フルカウルによる優秀な風防効果により、高速道路での疲労軽減効果は絶大です。ゆったりとした乗車姿勢と相まって、1日800km超のロングツーリングも楽にこなせます。
重量級の車体は細かな突き上げを吸収し、高速道路では抜群の安定性を発揮します。メーカー公称は非公表ですが、雑誌実測では230-240km/hという最高速性能により、高速巡航性能の高さを実証しています。22リットルの大容量タンクにより、前述の通り約400kmの航続距離を実現できるため、ガス欠の心配も少なく済みます。
シート下の収納スペースも充実しており、500mlペットボトルやカッパ上下が収納可能です。荷掛フックも4本装備され、タンデム時のグリップも使いやすい設計となっています。オプションでパニアケースの設定もあり、本格的なツーリング装備を整えることができます。
玄人好みの隠れた名車としての価値
GPZ1100は表面的な人気こそ低いものの、バイクに詳しい人ほど評価する傾向があります。カワサキファンの間では「知る人ぞ知る名車」として認識されており、同じ車種と出会うことが少ないという希少性も魅力の一つです。
特に水冷モデルは、エンジンの基本設計がGPZ900RからZRX1200まで続いているため、部品の共通性が高く、長期間の維持が可能です。キャブレター式エンジンのため、現代のインジェクション車では味わえない機械的な魅力もあります。
空冷モデルについては、現在では150万円から350万円という高額で取引されており、プレミア価格が付いている状況です。一方、水冷モデルは45万円台から購入可能で、同等の性能を持つ他車と比較すると異常なほどのコストパフォーマンスを実現しています。
項目 | 空冷GPz1100 | 水冷GPZ1100 |
---|---|---|
生産年 | 1981-1985年(5年間) | E型:1995-1998年 F型(ABS):1996-1997年 |
排気量 | 1089cc | 1052cc |
最高出力 | 120ps(公称) 実測約110-115ps |
97ps(国内)/123hp(海外) |
乾燥重量 | 244-250kg(モデル差あり) | 242kg |
タンク容量 | 21L(*一部北米20L*) | 22L |
最高速 | 約217km/h(実測) | 雑誌実測230-240km/h |
0-400m加速 | 11.18秒(Cycle World実測) | 公表データなし |
現在の中古価格帯 (2025年7月時点) |
150-350万円 | 45-130万円 |
ABS | なし | F型で装備(地域差あり) |
特徴 | 空冷最強エンジン/DFI初搭載 | ツーリング特化/ZZR1100系エンジン |
総括:GPZ1100が不人気と言われる理由と真の魅力を徹底解説
- 空冷GPz1100は1981年から1985年まで5年間生産された
- 1980年代前半の量産1100ccクラスでCycle World誌がクラス最速と評価
- 空冷モデルは歴代Z系エンジンの集大成として設計された
- カワサキ初のDFI(デジタル フューエルインジェクション)を搭載
- 水冷モデルは2025年7月時点で45万円台から購入可能
- 1052ccエンジンでZZR1100系の部品共通性が高い
- ニンジャ仕様カスタムベースとして実績がある
- オイル量3.7リットルで適正管理が性能維持の鍵
- マフラー交換で大幅な性能向上が可能
- 21-22リットルタンクで約400kmの航続距離
- フルカウルによる優秀な風防効果
- 重量級車体による高速安定性
- 水冷モデルは雑誌実測230-240km/hの最高速
- シート下収納とタンデム装備が充実
- キャブレター式エンジンの機械的魅力