
出典:SUZUKI公式
「バンディット1200は速い」という評判を耳にして、その具体的なスペックや最高速はどのくらいなのか、気になっているのではないでしょうか。また、ギアは何速ですかという基本的な疑問から、気になる燃費はどの程度なのか、さらにはフルパワー化やカスタムの可能性、そして中古で購入する際の注意点まで、知りたいことは多岐にわたるはずです。スズキが誇る伝統の油冷エンジンを搭載したこのマシンは、ただパワフルなだけでなく、多くのライダーを魅了する奥深い魅力を持っています。
この記事では、バンディット1200(GSF1200シリーズ)が持つ「速さ」の根源を、正確なスペックデータやオーナーの声、そしてカスタム情報といった多角的な視点から徹底的に解き明かしていきます。
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- バンディット1200が速い理由となるエンジン性能とスペック
- 最高速や0-100km/h加速に関する参考データ
- カスタムやフルパワー化によるポテンシャルの引き出し方
- 中古車選びで失敗しないための年式ごとの特徴とチェックポイント
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バンディット1200は本当に速いのか?その秘密

Ride Style・イメージ
- 圧倒的な加速を生む油冷エンジンのスペック
- カタログ値以上の実力?最高速は?
- ギアは何速ですか?力強い5速ミッション
- 初期型GSF1200(GV75A)とのスペック比較
- 軽快なハンドリングと高い安定性
圧倒的な加速を生む油冷エンジンのスペック
バンディット1200の「速さ」の源泉は、スズキ伝統の油冷4ストロークDOHC4バルブ並列4気筒エンジン(エンジン型式:V719)にあります。このエンジンは、レーサーレプリカであるGSX-Rシリーズで培われた冷却技術「SACS(Suzuki Advanced Cooling System)」を源流としており、軽量かつコンパクトな設計が大きな特徴です。エンジンオイルを冷却媒体として積極的に利用することで、水冷エンジンに不可欠な大型ラジエーターやウォータージャケットが不要となり、エンジン自体の軽量化と車体全体のマス集中化に貢献しています。
最高出力は100PS(74kW)を8,500rpmで発生させ、最大トルクは9.5kgf・m(93N・m)という強大な力をわずか6,500rpmの常用回転域で発揮します。このトルク特性こそが、バンディット1200の乗りやすさとパワフルな加速感を両立させている最大の理由と言えるでしょう。低回転域から非常に扱いやすく、Uターンなどの極低速走行でもギクシャクすることなく、アクセルを開ければ開けた分だけリニアにパワーが立ち上がります。言ってしまえば、街乗りでの穏やかな走行から、ワインディングでのアグレッシブな走りまで、あらゆるシーンでライダーの意のままに応えてくれる懐の深さを持っているのです。
エンジン型式 | V719 油冷4ストローク並列4気筒 DOHC4バルブ |
---|---|
総排気量 | 1156cc |
最高出力 | 100PS(74kW) / 8,500rpm |
最大トルク | 9.5kgf・m(93N・m) / 6,500rpm |
燃料供給方式 | キャブレター(MIKUNI BSR36) |
車両重量 | 241kg(装備) |
燃料タンク容量 | 20L |
カタログ値以上の実力?最高速は?
車輛預かってきた
バンディット1200マジに楽しい…(*´ノ∀`*) pic.twitter.com/UCL2q38qzI
— ライゼン@ライダー YAZAKI SPIRIT YZF-R6 (@99_YZF_R6) August 30, 2025
バンディット1200の最高速については、複数のメディアや資料で様々な数値が報告されています。一部の雑誌計測データでは239km/hという記録もありますが、一般的には230km/h前後という情報が多く見られます。むしろ注目すべきは、その俊敏な加速性能です。
0-100km/h加速は3.1秒~3.4秒程度、0-400m(ゼロヨン)は11.2秒~11.9秒と、出典によって幅はあるものの、非常に優れた数値を記録しています。このデータからも、常用域での爆発的な加速力こそがバンディット1200の真骨頂であることが分かります。
加速性能データ(参考値)
- 0-100km/h: 約3.1秒~3.4秒
- 0-400m: 約11.2秒~11.9秒
これらの数値はあくまで参考値であり、ライダーの技量や路面状況、車両コンディションによって大きく変動します。
ちなみに、国内仕様車には180km/hで作動するスピードリミッターが搭載されています。そのため、本来の性能を全て引き出すにはリミッターカットが必要です。もしリミッターがなく、エンジン回転数8,500rpmまで回した場合、理論上は(無風・無抵抗という理想的な条件下で)約258km/hに達する計算となります。ただし、これはあくまで計算上の数値であり、実際の走行では空気抵抗などにより、実測値である230km/h前後が現実的な上限となります。
ギアは何速ですか?力強い5速ミッション

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バンディット1200のトランスミッションは、全世代を通してリターン式の5段変速です。近年の大型バイクでは6速が主流のため、少し物足りなく感じるかもしれません。しかし、これは決してデメリットではありません。
バンディット1200の豊かなトルクを最大限に活かすため、各ギアのレシオ(変速比)は非常に計算されています。特に2001年モデルからは3速から5速がよりロング化され、高速巡航時の快適性が向上しました。トップギアである5速に入れれば、時速100kmでもエンジン回転数は約3,300rpmと低く抑えられ、静かで快適なクルージングを楽しめます。そこから追い越しをかける際も、シフトダウンせずにアクセルを開けるだけで、巨体を軽々と前へ押し出す力強い加速を味わうことができるのです。
6速ミッションがないことを懸念する声もありますが、実際にはこの5速ミッションがもたらすイージーライドな特性こそが、バンディット1200の大きな魅力となっています。
初期型GSF1200(GV75A)とのスペック比較
バンディット1200を語る上で、その直接のルーツである初期型GSF1200(GV75A)の存在は欠かせません。両車は同じ油冷1156ccエンジンを搭載しますが、そのキャラクターは大きく異なります。スペックを比較すると、その違いが明確になります。
項目 | バンディット1200(GV77A) | 初期型GSF1200(GV75A) |
---|---|---|
最高出力 | 100PS(74kW) / 8,500rpm | 97PS(71.3kW) / 8,500rpm |
最大トルク | 9.5kgf・m(93N・m) / 6,500rpm | 9.8kgf・m(96.1N・m) / 4,000rpm |
最高出力ではバンディット1200がわずかに上回りますが、最も注目すべきは最大トルクの発生回転数です。GSF1200はわずか4,000rpmで最大トルクを発生させる、より低回転域に振った刺激的な特性を持っていました。スロットル操作にダイレクトに反応する、荒々しい加速感が魅力だったのです。
一方、バンディット1200は最大トルクの発生回転数を6,500rpmに設定し、より中高回転域でパワーが伸びるマイルドで扱いやすい特性へと変更されました。これにより、誰にでもコントロールしやすく、より洗練された乗り味を手に入れたのです。
軽快なハンドリングと高い安定性

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バンディット1200の魅力は、エンジンの速さだけではありません。リッタークラスとは思えない軽快なハンドリングも特筆すべき点です。ダブルクレードルフレームとリンク式モノサスペンションという車体構成ながら、そのバランスは非常に高いレベルでまとめられています。
特に、2006年発売の後期型(GV79A)では、スイングアームが45mm延長され、ホイールベースが1430mmから1480mmへと50mm長くなることで、高速走行時の直進安定性がさらに向上しています。それでいて、ワインディングでは車体のコンパクトさを活かしてヒラヒラと軽快にコーナーをクリアしていきます。この「安定感」と「軽快感」の両立が、バンディット1200を万能なオールラウンダーたらしめているのです。
なお、一部のオーナーから特定の速度域(80km/h前後)でハンドルに微振動が発生することがある、という報告例もありますが、これはタイヤの銘柄や摩耗度、サスペンションやヘッドベアリングの整備状態に大きく影響されるようです。
バンディット1200が速い理由と中古購入のコツ

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- 速さを引き出す定番カスタムパーツ
- フルパワー化は可能?潜在能力を解放
- オーナーが語る実際の速さとは
- 中古で狙うべき年式と注意点
- 気になる燃費は?速さと両立できる?
速さを引き出す定番カスタムパーツ
バンディット1200はノーマルでも十分な速さを誇りますが、いくつかの定番カスタムを施すことで、そのポテンシャルをさらに引き出すことが可能です。特に人気が高いのは、マフラー交換と点火系の強化です。
マフラー交換
ノーマルマフラーは非常に静粛性が高い反面、音や抜けの良さに物足りなさを感じるオーナーも少なくありません。ヨシムラやヤマモトレーシングといった有名ブランドから、スリップオンタイプやフルエキゾーストタイプのマフラーがリリースされています。これらに交換することで、軽量化はもちろん、油冷エンジンらしい迫力のあるサウンドと、中高回転域でのパワーアップが期待できます。
オーナーの声からも「フルエキに交換したら吹け上がりがスムーズになった」「チタンならではの気持ちの良い音を奏でる」といった満足度の高い意見が多く見られます。
点火系の強化
よりエンジン性能を高めたいライダーに支持されているのが、ASウオタニの「SP2フルパワーキット」のような点火系強化パーツです。強力な点火エネルギーにより、混合気の完全燃焼を促進させます。結果として、始動性の向上、低中速トルクの増大、レスポンスアップといった効果が得られ、キャブレター車であるバンディット1200にとっては非常に効果的なカスタムと言えるでしょう。
フルパワー化は可能?潜在能力を解放
夕方またバイク乗ってきた。
楽しい!!
交差点からのスタートダッシュがたまらない。
このバイクだから?
同じリッターオーバーの4気筒も同じ感じなんだろな。#Bike#SUZUKI#bandit1200#油冷 pic.twitter.com/IBli8MEKry— うィん (@4334ak) August 9, 2024
前述の通り、国内仕様のバンディット1200には180km/hで作動するスピードリミッターが備わっています。サーキット走行などでバイク本来の性能を全て使い切りたい場合、このリミッターを解除する、いわゆる「フルパワー化」が必要になります。
リミッターカットは、専用のパーツを取り付けることで比較的簡単に行うことが可能です。これにより、5速の高回転域までスムーズに吹け上がるようになり、200km/hオーバーの世界を体験することができます。
【重要】スピードリミッターの解除は、サーキットなどのクローズドコースでの走行を目的としたものです。公道での使用は法律で禁止されており、大変危険です。カスタムは自己責任のもと、ルールとマナーを遵守してください。
もっとも、バンディット1200の魅力は最高速よりも、むしろ常用域でのトルクフルな加速にあります。そのため、多くのオーナーはリミッターカットをせずとも、その有り余るパワーに十分満足しているようです。
オーナーが語る実際の速さとは

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スペックデータも重要ですが、実際に所有しているオーナーが感じる「速さ」はどのようなものなのでしょうか。多くのレビューから共通して見られるのは、「低回転域の扱いやすさ」と「中高回転域での豹変ぶり」です。
あるオーナーは、「いつもは3,000rpm以下でゆったり走れるが、5,000rpmを超えると性格が一変し、急に暴れだすのが楽しい」と語ります。また、別のオーナーは「低速から有り余るパワーとトルクで、走り出したらとても扱いやすい。高速道路では本当に水を得た魚のようだ」と、そのツーリング性能の高さを評価しています。
このように、多くのオーナーが、普段使いできるジェントルな側面と、アクセルを開ければ怒涛の加速を見せるワイルドな側面の両方を高く評価しています。ただ直線が速いだけでなく、乗り手の操作に対して忠実に反応してくれるコントローラブルなパワーフィールこそが、バンディット1200が「乗って楽しい」と言われる所以なのでしょう。
中古で狙うべき年式と注意点

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バンディット1200を中古で探す場合、年式によって仕様が異なるため、ポイントを押さえておくと良いでしょう。大きく分けると、2000年~2005年の前期型(GV77A)と、2006年の後期型(GV79A)に分類されます。
年式による主な変更点
後期型(GV79A)は、前述の通りスイングアーム延長(ホイールベース1430mm→1480mm)による安定性向上が最大の変更点です。また、シート高が770mmと790mmの2段階調整式になり、ヘッドライトもより明るいラインビームタイプに変更されるなど、ツアラーとしての快適性と安全性が高められています。
特に注目の「油冷ファイナルエディション」
後期型の中でも特に狙い目なのが、2006年9月に発売された「油冷ファイナルエディション」です。これは油冷エンジンを搭載した最終モデルとして設定された特別仕様車で、ABSを標準装備しているのが最大の特徴です。他にも、ゴールドカラーホイールやタンクにあしらわれた専用の「油冷」エンブレムなど、特別な装備が与えられています。最後の油冷モデルという希少性もあり、コンディションの良い個体は今後価値が上がる可能性も考えられます。
中古車購入時のチェックリスト
- エンジンからの異音: 特に冷間始動時に異音がないか確認しましょう。
- オイル消費・漏れ: 一部の年式でオイル消費が多いという報告例があります。マフラーからの白煙やエンジン周りのオイル滲みを入念にチェックしてください。
- キャブレターの状態: 長期間動かしていなかった車両はキャブレターの不調が考えられます。アイドリングの安定性やスロットルレスポンスを確認しましょう。
- 足回りの状態: フロントフォークのオイル漏れや、ヘッドベアリング、リアサスペンションのリンク部分にガタがないか、車体を揺すって確認することが重要です。
気になる燃費は?速さと両立できる?

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1200ccという大排気量モデルだけに、燃費性能は気になるところです。スズキの公表する60km/h定地燃費値は26.5km/Lですが、実際のオーナーレビューを見ると、乗り方によって以下のような実燃費に集約されることが多いようです。
- 街乗り: 15km/L ~ 18km/L
- ツーリング・高速走行: 20km/L ~ 24km/L
丁寧にアクセル操作をすれば、ツーリングで20km/Lを超える数値を出すことは十分に可能です。燃料タンク容量が20Lと大きいこともあり、満タンからの航続距離はツーリングペースであれば350km以上が期待できます。ただし、これは日本の交通環境での一般的な数値であり、アグレッシブな走行や海外メディアの平均データ(約12~13km/L)に見られるように、走り方や環境によって燃費は大きく変動する点には注意が必要です。
なお、この油冷バンディット1200の歴史は2006年のファイナルエディションをもって幕を閉じ、翌2007年からは新開発の水冷フューエルインジェクションエンジンを搭載した「バンディット1250」へとバトンが渡されました。これもまた、油冷モデルが持つ独特の味わいと希少性を高める一因となっています。
総括:バンディット1200はなぜ速い?スペックと最高速の秘密を徹底解説
- エンジンは1156ccの油冷4気筒V719型で100PSを発揮
- 最大トルク9.5kgf・mを6,500rpmの常用域で発生させ力強く加速
- 0-100km/h加速は3秒台前半という俊足な参考データがある
- ミッションはトルクを活かすワイドなギア比の5速リターン式
- 時速100km巡航時のエンジン回転数は約3,300rpmと低く快適
- 初期型GSF1200より高回転型でマイルドなエンジン特性
- リッタークラスとしては軽量コンパクトで軽快なハンドリング
- 2006年式(GV79A)はホイールベース延長で安定性が向上
- 定番カスタムはマフラー交換やASウオタニSP2による点火系強化
- 国内仕様は180km/hで作動するスピードリミッターを搭載
- オーナーからは中高回転域での豹変ぶりが高く評価されている
- 中古ではABS標準の油冷ファイナルエディションが特に人気
- 中古車選びではオイル消費や足回りの状態を入念にチェック
- 燃費はツーリングで20km/L以上も可能で経済性も良好
- 2007年からは後継の水冷モデル「バンディット1250」が登場